1.はじめに
金融庁は、2024年8月22日に「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果を公表しました。
2021年10月に経済協力開発機構(OECD)/主要20か国・地域(G20)の「BEPS包摂的枠組み」においてグローバル・ミニマム課税について合意が行われたことを受け、我が国においても国際的に合意されたグローバル・ミニマム課税のルールのうち所得合算ルール(IIR)に係る取扱いが2023年3月28日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号)において定められ、2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用されています。
2024年3月22日に企業会計基準委員会(以下「ASBJ」)は、実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「実務対応報告第46号」)を公表しました。
▼実務対応報告第46号の詳細につきましては、以下をご覧ください。
https://www.uhy-tokyo.or.jp/article/5146
本件は実務対応報告第46号の公表を受けて、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等及び「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(財務諸表等規則ガイドライン)等について所要の改正を行うものです。
2.改正の概要
1.貸借対照表における表示
グローバル・ミニマム課税制度に係る未払法人税等のうち、貸借対照表日の翌日から起算し1年を超えて支払の期限が到来するものは、連結貸借対照表及び個別貸借対照表の固定負債の区分に「長期未払法人税等」などその内容を示す科目をもって表示することとされています。
本内閣府令等の主な改正内容は、具体的には以下の通りです。
- 連結財務諸表及び財務諸表の固定負債の区分掲記として、「長期未払法人税等」を追加(財務諸表等規則/連結財務諸表規則)
- 各様式の例示として、固定負債の区分に「長期未払法人税等」を追加(財務諸表等規則/連結財務諸表規則)
- 「長期未払法人税等には、例えば、国際最低課税額に対する法人税等のうち、貸借対象日の翌日から起算して1年を超えて支払の期限が到来するものが含まれることに留意する」旨を追加(ガイドライン)
上記のほか、中間連結財務諸表(第一種および第二種)についても、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等および未払法人税等に関する定めが新設されています。
2.損益計算書における表示
1. 連結損益計算書における表示および注記
連結損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)を示す科目に表示することとされています。
また、連結損益計算書においてグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が重要な場合は、当該金額の注記を求めることとされています。
本内閣府令等の主な改正内容は、具体的には以下の通りです。
- 国際最低課税額の金額がある場合において、当該国際最低課税額に対する法人税等に重要性があるときは、当該金額を注記しなければならない旨の規定を追加(連結財務諸表規則)
2. 個別損益計算書における表示および注記
個別損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)を表示した科目の次に、その内容を示す科目をもって区分して表示するか、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)に含めて表示し当該金額を注記するとされています。また、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の金額の重要性が乏しい場合は、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)に含めて表示することができ、この場合は当該金額の注記を要しないとされています。
本内閣府令等の主な改正内容は、具体的には以下の通りです。
- 税引前当期純利益(損失)金額の次に記載する項目として、「当該事業年度に係る国際最低課税額に対する法人税等」を追加(財務諸表等規則)
- 国際最低課税額に対する法人税等を「法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)」に含めて記載することができる旨を追加。またこの場合において重要性が乏しい場合を除き、注記しなればならない旨を追加(財務諸表等規則)
- 各様式の例示として、法人税、住民税及び事業税の次に「国際最低課税額に対する法人税等」を追加(財務諸表等規則)
上記のほか、中間連結財務諸表(第一種および第二種)についても、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等および未払法人税等に関する定めが新設されています。
3.適用時期
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令等は、2024年8月22日付で公布・施行されます。
4.参考資料
詳細は、以下をご参照ください。
https://www.fsa.go.jp/news/r6/sonota/20240822/20240822.html