「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」及び 「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」の改正

改正の概要 

平成22年9月3日に、日本公認会計士協会より、「 会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」及び 同第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」の改正が公表されました。

本改正は、平成22年度税制改正によるグループ法人税制の創設等並びに改正実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」及び改正実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」の公表(企業会計基準委員会 平成22年6月30日)に対応するために見直しを行ったものです。 

完全支配関係にある国内会社間の譲渡取引に係る損益の繰延べ

 個別財務諸表上の取扱い

 完全支配関係にある国内会社間の資産の移転に係る損益のうち一定の要件を満たすものは課税の繰延べが行われます。この場合、譲渡した事業年度の課税所得を構成せずに課税が繰り延べられることとなる損益は、売手側の個別財務諸表における一時差異に該当し、税効果の対象となります。なお、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の計算に用いる税率は、売手側に適用される税率であり、当該一時差異の回収又は支払が見込まれる期における税率に基づき算定されます。(第10号第33-2項)

 将来減算(加算)一時差異の例示の追加 

個別財務諸表における将来減算(加算)一時差異について、以下の例示が追加されました。(第10号第8項、第10項)

 <将来減算一時差異の例示>

  • 完全支配関係にある国内会社間の資産の移転による譲渡損の繰延べに係る税務上の調整資産
  • 完全支配関係にある国内会社間の寄附金受領法人の株主における子会社株式の税務上の簿価修正

 <将来加算一時差異の例示>

  • 完全支配関係にある国内会社間の資産の移転による譲渡益の繰延べに係る税務上の調整負債
  • 完全支配関係にある国内会社間の寄附金支出法人の株主における子会社株式の税務上の簿価修正

 連結財務諸表の取扱い

<基本的な取扱い>

譲渡当事会社の属する企業集団の連結財務諸表において、譲渡した事業年度の課税所得を構成せずに課税が繰り延べられることとなる損益は、基本的には、連結財務諸表上において消去されることから、繰延税金資産及び繰延税金負債を認識しません(第6号第12-2項)。

 <企業集団内の会社に子会社株式又は関係会社株式を売却した場合の取扱い>

ある会社が完全支配関係にある他の会社に投資(子会社株式又は関連会社株式)を売却したことにより発生した譲渡損益の繰延べに係る税務上の調整資産又は負債に係る個別財務諸表上の一時差異の税効果については、連結財務諸表上も、修正されずに、個別財務諸表上において認識された繰延税金資産又は繰延税金負債が計上されます(第6号第30-2項)。

 <未実現損益の消去に係る一時差異の取扱い>

完全支配関係にある国内会社間の資産の移転に係る譲渡損益のうち一定の要件を満たすものは課税の繰延べが行われ、売手側の個別財務諸表固有の一時差異に該当します。しかし、基本的には、連結財務諸表において当該譲渡損益は消去されることから、売手側の個別財務諸表固有の一時差異(上記の子会社株式又は関連会社株式の売却により生じた一時差異)は除く。)も連結財務諸表上は消去されることになり、繰延税金資産及び繰延税金負債は認識しません。(第6号第47項)

 適用時期 

平成22年9月3日以後終了する事業年度末(連結会計年度末)及び四半期会計期間末から適用されます。

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