「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」の改正

改正の概要

企業会計審議会から平成21年4月9日に「監査基準の改訂に関する意見書」が公表されたことにより、日本公認会計士協会は、継続企業の前提に関する監査基準の改訂を行い、関連する実務指針等の改訂を行いました(監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」、監査・保証実務委員会報告第76号「後発事象に関する監査上の取扱い」、監査基準委員会報告書第22号「継続企業の前提に関する監査人の検討」等)。

本改正は上記に伴い、投資事業有限責任組合(以下、「有責組合」という。)の継続企業の前提に関し整理を行ったものです(平成22年1月13日)。

継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事業又は状況

本改正により、有責組合の継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象とは、「正常な事業活動が阻害される場合、すなわち、貸借対照表日の翌日から存続期限(存続期限の延長が決定している場合には、延長後の存続期限)までの期間(以下「存続期間」という。)内に資産の回収及び負債の返済が完了されないおそれがある場合を想定して検討するのが適当である」とされました(第10項)。

具体的には、「組合事業の遂行そのものに支障が生じていない有責組合の有期限性の下では、組合事業における存続期間が一年未満となった場合に、存続期間内での資産の回収及び負債の返済が完了されないおそれがある状況」が該当します(第11項)。

重要な不確実性の有無

存続期間が一年未満の場合の処分方針

上記の有責組合の継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況において、無限責任組合員が、「有責組合が保有する未公開株式について、処分時期、処分方法等の処分方針を明確にして当該期間内での完了を計画」している場合、この処分方針は「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況」を解消し、又は改善するための対応策に該当します。

したがって、無限責任組合員がこの対応策を講じてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否かという観点から、継続企業の前提に関する検討が行われることになります。

例えば、処分にかかる売買契約の締結が確定していない場合には、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるものと考えられます(第12項)。

存続期限の延長

上記の有責組合の継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況において、無限責任社員が「存続期限の延長を計画」している場合、このような無限責任組合員の計画は、「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況」を解消し、又は改善するための対応策に該当するものと考えられます。

したがって、無限責任組合員がこの対応策を講じてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否かという観点から、継続企業の前提に関する検討が行われることになります。

例えば、組合契約に定める手続に従って延長が行われることが確定していない場合には、重要な不確実性が認められるものと考えられます(第13項)。

継続企業の前提に関する注記

上記の「重要な不確実性」が認められる場合(第12項、第13項)、「継続企業の前提に関する注記」が必要となります。この場合、以下の事項を記載する必要があります。

  • 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する旨
  • 当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策
  • 当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由
  • 財務諸表は継続企業を前提として作成されており、当該重要な不確実性の影響を財務諸表に反映していない旨

なお、本報告における記載事項以外の理由により、継続企業の前提に関する注記が必要となる場合には、監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」に従うことになります(第17項)。

継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるまでには至らない場合であっても、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合、有責組合会計規則に準拠した財務諸表等においては業務報告書に、金融商品取引法に基づく有価証券報告書又は半期報告書においては、財務諸表又は中間財務諸表以外の箇所に適切に開示する必要があります(第18項)。

適用時期

平成22年1月13日より適用。

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