「顧客との契約に係る収益認識(公開草案)」及びIAS第18号「収益」の概要
2010年6月24日に「顧客との契約に係る収益認識(公開草案)」(以下、ED)が公表されました。広く一般からのコメントの結果を受けて2011年6月に収益認識に関する基準が公表される予定です。このため、以下に記載した内容は、今後公表予定の基準の内容如何によっては、その内容が変更される可能性があることをご了承ください。
(1)顧客との契約を識別
必要に応じて一つの契約を分割、又は複数の契約を結合します。
(2)収益に提供すべき義務を識別
(1)の契約中における各々の義務をします。
(3)取引金額の測定
値引き、顧客に対する付与するポイント、信用リスク等を考慮した上で顧客より受領できる金額を測定します。
(4)(3)の取引金額を(2)の義務に配分
各物品及び役務を単独で販売した場合の価格割合で配分します。
(5)(2)の義務を果たしたものを収益として認識
顧客が物品又は役務に対する支配獲得時(注)に収益認識します。
(注)支配獲得とは例えば以下の指標を満たす場合です。
- 顧客は、無条件の支払義務を負う
- 顧客は、資産に対する法的所有権を有する
- 顧客は、資産を物理的に占有
- 資産又は役務の仕様又は機能は顧客専用であるため、他へ転売不可
「ED」に照らした工事契約の取扱い
日本基準では、工事契約(ソフトウェア開発含む)に関して、原則として、工事進行基準により収益認識するとされており、現行のIFRSと大きな差異はありません。
一方、EDでは、工事又は製作の結果顧客に引渡しされる資産に対して、顧客が支配を獲得する時点に収益認識します。この結果、標準品に関する工事又は製作については進行基準が認められない可能性が高いといえます。従って、現行の日本基準とEDでは、工事進行基準の適用基準が異なる可能性があるため、注意が必要です。
すなわち、日本基準で例外的に認められている工事完成基準に関して、EDの考え方によれば、顧客の支配獲得時点次第で(特に標準品については)認められることになります。
「ED」に照らしたポイント等の取扱い
日本基準では、顧客に付与されるポイントやクーポン券等に関して、その使用見込みを引当金計上(又は使用時に費用処理)している場合が多いと思われます。
一方、IFRSでは、付与したポイントやクーポン券等の価値を売上高から控除する必要があり、日本基準と会計処理が大きく異なっています。