IFRS第9号「金融商品」(金融資産・分類及び測定)の概要
金融資産の分類及び測定
IFRS第9号における金融資産の分類及び測定の全体像

図1
一般的には以下の通りと考えられます。
負債性商品(貸付金等) | 条件a), b)をともに満たす場合は償却原価で測定し、それ以外では公正価値で測定 |
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資本性商品(株式等) | 公正価値で測定 |
(注)公正価値オプションとは、当初認識時に、金融資産を純損益(≒P/L)を通じて公正価値で測定するものとして指定すること。
OCIオプションとは、当初認識時に、金融資産をその他包括利益を通じて公正価値で測定するものとして指定すること。
日本基準との相違点 | ||
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分類 | IFRS | ビジネスモデルと契約上のキャッシュ・フローの特徴により分類 |
日本基準 | 債権、有価証券等、金融商品の保有目的と属性により分類 | |
測定 | IFRS | 非上場株式等(相場価格のないもの)に対して取得原価評価は不可長期貸付金等の長期債権は、償却原価により評価 |
日本基準 | 非上場株式等(相場価格のないもの)は、一般的には取得原価により評価長期貸付金等の長期債権は、通常契約価額により評価 |
組込デリバティブの扱い
日本基準では、一定の場合において区分処理が必要とされますが、IFRSでは、デリバティブでない主契約(原資産)が金融資産であるか否かにより、区分処理の要否が定められます。
- 原資産が金融資産
- 複合金融商品を一体として取扱い、図1に示すように分類、測定
- 原資産が金融資産でない
- 基本的に、複合金融商品を原資産とデリバティブに区分
- 原資産
- そのIFRSの基準に従い会計処理
- デリバティブ
- 当基準に基づき公正価値で測定
分類の変更
分類の変更を行える場合は限定的である点は、IFRS及び日本基準共に同様です。但し、日本基準では、以下のとおり有価証券の分類変更のみ想定している点、及び変更要因の点等で相違します。
IFRS:金融資産の管理に関する事業モデルを変更した場合にのみ、影響を受けるすべての金融資産の分類を変更
日本基準:有価証券について、資金運用方針の変更等が行われた場合にのみ、変更可又は必要
利得及び損失の認識
利得及び損失の認識については、IFRSと日本基準はほぼ同様です。
すなわち、IFRS及び日本基準の双方において、金融資産の測定に伴い発生した利得または損失は、原則として純損益(≒P/L)を通じて認識します。
但し、有価証券に対する評価差額の取扱いの点で、以下のとおり相違があります。
IFRS:当初認識時に、公正価値の事後的な変動を、その他包括利益計上するとの取消不能な選択が可能(売買目的保有は対象外、一株毎の選択可)
⇒その他包括利益計上を選択した場合、その後売却しても、売却損益のP/L計上は不可
日本基準:全部純資産直入法、又は部分純資産直入法の選択適用可能(その他有価証券に限る、変更を行う場合は正当な理由が必要)
⇒ いずれを選択しても、その後売却した際の売却損益は、P/L計上