ヘッジ会計に関する公開草案

ヘッジ会計に関する公開草案の件

2010年12月9日に、IASB(国際会計基準審議会)よりヘッジ会計に関する公開草案が公表されました。当該草案は、2011年3月9日まで広く一般からのコメントを受け付けています。また、コメントを踏まえて必要に応じた修正を行った後、2011年6月までに基準として確定する予定です。このため、以下に記載した内容は、今後公表予定の基準の内容如何によっては、その内容が変更される可能性があることをご了承ください。

公開草案と従前の基準との関係

公開草案の内容は、主として、現行の基準(IAS第39号「金融商品」)と以下の点で相違します。

  • ヘッジの有効性評価における、ヘッジが有効とみなされる場合の比率基準「80%~125%」は廃止
  • ヘッジ会計の適格要件を満たす公正価値ヘッジについて、ヘッジ手段から生じる損益は、P/Lではなく、その他包括利益に計上する
  • 上述の公正価値ヘッジの場合、ヘッジ対象に生じる損益は、その帳簿価額を調整するのではなく、B/S上その科目の次に別の科目を設けて計上する。また、見合いの金額は、P/Lではなく、その他包括利益に計上する

公開草案と日本基準との相違

公開草案の内容は、日本基準で認められている以下の会計処理を認めていません。これは、現行基準であるIAS第39号「金融商品」でも同様の取扱いです。

  • 金利スワップの特例処理
  • 為替予約の振当処理
  • ヘッジに高い有効性があると言える場合における、有効性評価の省略

公開草案の概要

ヘッジ手段とヘッジ対象

適格なヘッジ手段

公正価値で評価を行い、その評価差額をP/L計上する金融資産及び負債は、ヘッジ手段として指定することが出来ます。一方、評価差額をその他包括利益に計上するものは、ヘッジ手段として指定することが出来ません。

適格なヘッジ対象

ヘッジ対象となりうるものは、以下のいずれかに分類されます。

  • 認識されている資産又は負債
  • 未認識の確定約定
  • 可能性が非常に高い予定取引
  • 在外営業活動体に対する純投資

ヘッジ会計の適格要件

ヘッジ会計を適用する場合には、以下の全てを満たす必要があります。

  • ヘッジ関係は、適格なヘッジ手段及びヘッジ対象(前述参照)のみから構成される
  • ヘッジの開始時において、ヘッジ関係と企業のリスク管理目的及び戦略の、公式な指定及び文書がある(現行の日本基準と基本的に同一です)
  • ヘッジ関係は、以下のヘッジ有効性の要件を満たしている
    1. ヘッジ有効性の評価目的に合致
    2. 偶然の相殺ではなく、ヘッジが行われることが想定

公正価値ヘッジの会計処理

ヘッジ有効部分

会計処理対象 利得又は取扱い
ヘッジ手段 「その他包括利益」に計上
ヘッジ対象
  • ヘッジ対象の勘定科目の次に、独立科目を設けて計上(=ヘッジ対象の帳簿価額は調整しない)
  • 見合いの金額は「その他包括利益」に計上

ヘッジ非有効部分

会計処理対象 利得又は取扱い
ヘッジ手段
ヘッジ対象
  • ヘッジ会計適用当初より非有効部分 P/L上の損益として計上
  • ヘッジ会計適用当初は有効→その後有効 当初認識したその他包括利益をP/L上の損益へ振替

キャッシュ・フローヘッジの会計処理

ヘッジ有効部分

会計処理対象 利得又は取扱い
ヘッジ手段 「その他包括利益」に計上
ヘッジ対象 該当なし

ヘッジ非有効部分

会計処理対象 利得又は取扱い
ヘッジ手段 P/L上の損益として計上
ヘッジ対象 該当なし
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