IFRSにおける棚卸資産関連基準

本解説は、2011年4月30日に公開した記事を更新したものです。

概要

IAS(国際会計基準)では、棚卸資産に関連する基準として、以下の3つの基準があります。

  • IAS第2号「棚卸資産」
  • IAS第11号「工事契約」
  • IAS第38号「無形資産」

IAS第2号「棚卸資産」

 日本において採用されている「棚卸資産の評価に関する会計基準」は、既にIAS第2号との齟齬を解消する方針に基づき作成されています。このため、大枠では、既に日本において採用されている基準と国際会計基準との差異はありません。

 (1) IAS 第2号「棚卸資産」の範囲

 日本基準とほぼ同一です。

 (2) 原価の範囲と測定

 大枠では日本基準とほぼ同一ですが、主として以下の点で相違があります。

  • 仕入割引は、仕入原価より控除
  • 棚卸資産が現在の場所、状況に至ることに寄与した管理部門の間接費を原価に含む

(3) 費用化と減損戻入

  • 費用化については、日本基準とほぼ同一
  • 日本基準で認められている切放し法の採用は不可であり、洗替法の採用のみ認められる

(4) 開示

 上記(3)に関連して、戻入を行った場合には、その原因となった状況及び事象の開示が必要です。

(5) 原価計算

 日本基準とほぼ同一ですが、固定製造間接費は、生産設備の正常生産能力に基づく配賦が原則となります。

IAS第11号「工事契約」(ソフトウェア開発業等に関連)

 現行のIAS第11号では、進行基準による売上計上が原則であり、完成基準の適用は認められません。このため、対応する原価が棚卸資産として計上されることはありません。

 ただし、2010年6月公表の「顧客との契約における収益認識(公開草案)」によると、完成基準及び進行基準のいずれかが原則というわけではなく、実態に照らした判断に基づき会計処理を決定することとされています。

IAS第38号「無形資産」(研究開発を行う企業に関連)

 日本基準とほぼ同一ですが、開発段階における支出についてIFRSでは、要件を満たす場合には無形資産の取得原価を構成し、減価償却を通じて棚卸資産の取得原価を構成します。

 

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