SSBJ「サステナビリティ開示基準」の公表について

1.はじめに

サステナビリティ基準委員会(以下、「SSBJ」)は、国際サステナビリティ基準審議会(以下「ISSB」)の設立を受け、2022年7月に、我が国において適用されるサステナビリティ開示基準の開発及び国際的なサステナビリティ開示基準の開発への貢献を目的として設立されました。

SSBJは2025年3月25日に、我が国最初のサステナビリティ開示基準となる、次の3つのサステナビリティ開示基準(以下、「SSBJ基準」)を公表しました。

  1. サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」(以下、「適用基準」)
  2. サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」(以下、「一般基準」)
  3.  サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」(以下、「気候基準」)

2.SSBJ基準の概要

開発にあたっての基本的な方針

SSBJは、サステナビリティ開示基準の開発にあたり、基準を適用した結果として開示される情報が国際的な比較可能性を大きく損なわせないものとなるようにするため、原則として IFRSサステナビリティ開示基準の要求事項をすべて取り入れる方針で開発されています。

その上で、相応の理由が認められる場合には、IFRSサステナビリティ開示基準の要求事項に独自の取扱いを追加することを認めています。また必要と認められる場合には、IFRSサステナビリティ開示基準にはないSSBJ基準独自の定めを置く場合もあります。

サステナビリティ開示基準の構成

SSBJは、基準を適用した結果として開示される情報が国際的な比較可能性を大きく損なわせないものとなるようにすることを意図して基準開発を行っています。
そのため、IFRS サステナビリティ開示基準の内容を取り入れる場合であっても、基準の読みやすさを優先して定めの順番等を入れ替えたり、用語を言い換えたりしたうえでSSBJ基準を定めています。

IFRS S1号は、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関して開示すべき事項(以下、「コア・コンテンツ」)を定めた部分と、コア・コンテンツ以外の、サステナビリティ関連財務開示を作成する際の基本となる事項を定めた部分とで構成されており、IFRS S1号のコア・コンテンツに関する定めは、具体的に適用される IFRSサステナビリティ開示基準が存在しない場合に適用することとされています。

SSBJ基準は、わかりやすさの観点から、我が国におけるIFRS S1号に相当する基準を、コア・コンテンツ以外の基本となる事項を定める適用基準(ユニバーサル基準「適用基準」)と、コア・コンテンツを定める一般基準(テーマ別基準「一般基準」)とに分けています。

適用対象企業

SSBJ基準では、具体的な適用対象企業を定めていませんが、金融商品取引法の枠組みにおいて本基準が適用されること、特にグローバル投資家との建設的な対話を中心に据えた企業であるプライム上場企業が適用することを想定して開発されています。

金融商品取引法に基づく法定開示(有価証券報告書)におけるSSBJ基準の適用対象企業及び適用時期等については、金融庁が金融審議会に設置した「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」の検討に基づき、金融庁が法令において定めることが想定されています。

3.ユニバーサル基準「適用基準」の概要

サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」
https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/jponly_20250305_01.pdf

「適用基準」では、SSBJ基準に準拠したサステナビリティ関連財務開示を作成し、報告する場合において、基本となる事項を示しています。

開示する情報

サステナビリティ関連財務開示は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を適正に表示しなければならないとされています。

そのため、開示する情報は重要性のある情報に限定され、情報に重要性がない場合、サステナビリティ開示基準で要求する情報であっても、これを開示する必要はないとされています。

報告企業

SSBJ基準では、報告の対象とする企業の範囲を「報告企業」と定義しています。

サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表と同じ報告企業に関するものでなければならないとされています。そのため、連結財務諸表を作成する場合は、連結財務諸表に含まれる企業の範囲が「報告企業」となります。

関連する財務諸表との関係

サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表とあわせて開示しなければならないとされています。

ただし、以下の場合は合わせて開示しないことができるとされています。
① 法令の定めにより関連する財務諸表とあわせて開示することを禁止しているか、あわせて開示しないことを容認しているとき
② 任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合

4.テーマ別基準「一般基準」の概要

サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」
https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/jponly_20250305_02.pdf

「一般基準」では、財務報告書の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する意思決定を行うにあたり有用な、当該企業のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報の開示について定められています。

一般基準は、IFRS S1号のコア・コンテンツに関する定めと同様に、具体的なテーマ別基準が存在しない場合において適用されます。具体的に現時点では、「気候基準」として定められている気候関連以外のテーマについて開示する場合に適用されることになります。

4つの構成要素

一般基準では、以下の4つの要素ごとにそれぞれの開示目的とそれを達成するための開示すべき事項が定められています。
① ガバナンス
② 戦略
③ リスク管理
④ 指標及び目標

5.テーマ別基準「気候基準」の概要

サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」
https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/jponly_20250305_03.pdf

「気候基準」では、財務報告書の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する 意思決定を行うにあたり有用な、当該企業の気候関連のリスク及び機会に関する情報の開 示について定められています。

コア・コンテンツの開示

気候基準では、気候関連のリスク及び機会に関する情報の開示について、一般基準と同様に4つの要素(①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標)ごとに、開示目標とそれを達成するための開示すべき事項が定められています。

6.適用時期等

SSBJ基準は、公表日以後終了する事業年度から任意適用が可能とされています。

強制適用の時期等については明示されておらず、金融庁が金融審議会に設置した「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」の検討に基づき、金融庁が法令において定めることが想定されています。

7.参考資料

詳細は、以下をご参照ください。
https://www.ssb-j.jp/jp/ssbj_standards/2025-0305.html

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