1.はじめに
2021年1月18日に、経済産業省から「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示FAQ(制度編)」、また日本公認会計士協会から監査・保証実務委員会研究報告「事業報告等と有価証券報告書の一体開示に含まれる財務諸表に対する監査報告書に関する研究報告」(公開草案)が公表されました。
現在、制度上は、会社法と金融商品取引法の両方の要請を満たす一つの書類を作成して、株主総会前に開示することは可能となっています。
会社法に基づく事業報告及び計算書類と金融商品取引法に基づく有価証券報告書の一体的開示を行おうとする企業の試行的取組を支援するための方策として、2018年12月28日に内閣官房、金融庁、法務省及び経済産業省は連名で「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について」を公表し、会社法に基づく事業報告及び計算書類等と金融商品取引法に基づく有価証券報告書の一体的開示を行おうとする企業の試行的取組を支援するための方策として、有価証券報告書兼事業報告書の記載例を示しました。
これら事業報告等と有価証券報告書の一体的開示に関する取組に関し、2021年1月18日に経済産業省から一体的開示FAQ(制度編)が、また日本公認会計士協会から監査報告書の文例を含む研究報告が公開されましたので、以下に解説します。
2.経済産業省公表資料
経済産業省は、一体的開示の実務への普及のため、2018年12月の記載例公表後も開示書類作成者である企業実務者や開示関係者(監査法人、関係機関等)と継続的に意見交換を重ね、その中で多く寄せられた質問を整理し、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示FAQ(制度編)」(以下「一体的開示FAQ(制度編)」)として2021年1月18日に公表しています。
一体的開示FAQ(制度編)において「一体開示」とは、会社法(事業報告等)と金融商品取引法(有価証券報告書)の要請を満たす一つの書類を作成して、株主総会前に開示することと定義されています。
また「一体的開示」とは、「一体開示」に加え、事業報告等と有価証券報告書の記載内容を可能な範囲で共通化し、別々の書類として作成・開示する場合等を包含するより広い概念であると定義されており、事業報告等と有価証券報告書という2つの書類を一体として作成する「一体開示」は、“一体的開示の最終形”として位置づけられています。
「一体的開示FAQ(制度編)」は、一体的開示の制度全般に関する「一体的開示と一体開示に関するFAQ」と、一体開示を実施する場合に関する「一体開示に関するFAQ」の2つから構成されています。
詳細は以下をご覧ください。
(経済産業省HPリンク)
https://www.meti.go.jp/press/2020/01/20210118001/20210118001.html
3.日本公認会計士協会公表資料
日本公認会計士協会(監査・保証実務委員会)は、有価証券報告書兼事業報告書に含まれる財務諸表及び連結財務諸表に対する監査報告書に関して、会員の業務を支援するために留意事項を取りまとめ、2021年1月18日に監査・保証実務委員会研究報告「事業報告等と有価証券報告書の一体開示に含まれる財務諸表に対する監査報告書に関する研究報告」(公開草案)(以下「本研究報告」)を公表しました。
関連省庁が2018年12月28日に公表した「一体的開示の記載例」は、会社計算規則に基づき作成される計算書類及び附属明細書と財務諸表等規則等に基づき作成される財務諸表を一体の書類として作成する上で有益なものではあるものの、これに対する監査報告書の文例は含まれていませんでした。
そのため日本公認会計士協会では、一体書類に含まれる財務諸表に対して、会員が監査人(会社法監査における会計監査人を含む)として監査報告書を作成する場合の文例を示すものとして、本研究報告が取りまとめられました。
また本研究報告においては、一体の書類としての監査報告書を作成する場合の考察及び文例が示されていますが、文例については一つの例示であるに過ぎず、また、一体書類に対して会社法及び金融商品取引法の監査報告書をそれぞれ作成することを妨げるものではないとされています。
本研究報告に対するコメント募集期限は、2021年2月1日までとされています。
詳細は以下をご覧ください。
(日本公認会計士協会リンク)
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20210118jeg.html