ASBJ「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」の改訂について

1.はじめに

2020年2月26日に企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」)より「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」の改訂が公表されました。

2.日本基準

開発中の会計基準

◆収益認識に関する会計基準
日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組みの一環として、2018年3月30日に、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」が公表され、企業会計基準第29号が適用される時(2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首)まで(準備期間を含む。)に、収益に関する表示科目や注記事項の定めについて検討することが予定されていました。

(検討状況及び今後の計画)
2019年10月30日に、企業会計基準公開草案第66号(企業会計基準第29号の改正案)「収益認識に関する会計基準(案)」等を公表し、2020年1月10日にコメントを締め切られています。現在、公開草案に寄せられたコメントへの対応を検討しており、2020年3月に最終基準化することが目標とされています。

◆公正価値測定に関するガイダンス及び開示
日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組みの一環として、2019年7月4日に企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」等が公表されました。

(検討状況及び今後の計画)
投資信託の時価の算定に関して、会計基準公表後概ね1年をかけて検討を行い、検討後、その取扱いを改正することが予定されています。また、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記についても、投資信託の取扱いを改正する際に取扱いを明らかにすることが予定されています。

◆リースに関する会計基準
日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組みの一環として、すべてのリースについて資産及び負債を認識するリースに関する会計基準の開発に向けて、国際的な会計基準を踏まえた検討が行われています。合わせて、リースの貸手の収益認識に関する会計処理(リース業における割賦販売取引の会計処理を含む)について検討することも予定されています。

(検討状況及び今後の計画)
2019年3月に、すべてのリースについて資産及び負債を認識するリースに関する会計基準の開発に着手することが決定されました。これまで、開発にあたって想定される論点等について、関連する業界団体から意見聴取を行った後、リース会計基準改正に関する基本的な方針について検討を開始しています。開発の目標時期は特に定められていません。

◆金融商品に関する会計基準
日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組みの一環として、予想信用損失モデルに基づく金融資産の減損についての会計基準の開発に向けて、検討を行うこととされています。なお、金融資産及び金融負債の分類及び測定については、今後、会計基準の開発に着手するか否かについて判断する予定です。

(今後の計画)
2019年10月に、予想信用損失モデルに基づく金融資産の減損についての会計基準の開発に着手することが決定されています。開発の目標時期は特に定められていません。

◆「見積りの不確実性の発生要因」及び「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」に関する開示
「見積りの不確実性の発生要因」及び「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」に関する開示について、基準諮問会議からの提言に基づき、これらの開示の充実を図ることを目的として検討が行われています。

(検討状況及び今後の計画)
2019年10月30日に企業会計基準公開草案第68号「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」及び企業会計基準公開草案第69号(企業会計基準第24号の改正案)「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」を公表し、2020年1月10日にコメントが締め切られています。現在、公開草案に寄せられたコメントへの対応を検討しており、両会計基準ともに、2020年3月に最終基準化することが目標とされています。

◆財務諸表を継続企業の前提に基づき作成することが適切であるかどうかの判断規準の作成
(検討状況及び今後の計画)
開発の目標時期は特に定められていません。

◆取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式の発行等をする場合における会計処理
(検討状況及び今後の計画)
2020年7月又は8月に公開草案を公表することが目標とされています。

開発中の指針(実務上の取扱いを含む)

◆税効果会計に関する指針
日本公認会計士協会から公表されている税効果会計及び当期税金に関する実務指針について、基準諮問委員会からの提言に基づき、ASBJの適用指針等への移管が2018年2月に完了しています。
現在、当該移管後に改めて対応すべきかどうか検討するとしていた論点のうち、法人税等の計上区分(その他の包括利益に対する課税)及びグループ法人税制が適用される場合の子会社株式の売却に係る税効果について検討しています。

(今後の計画)
開発の目標時期は特に定められていません。

◆子会社株式及び関連会社株式の減損とのれんの減損の関係
日本公認会計士協会から公表されている会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」に定められる連結財務諸表におけるのれんの追加的な償却処理について、子会社株式及び関連会社株式の減損とのれんの減損の関係を踏まえ、検討が行われています。

(検討状況及び今後の計画)
2017年10月より検討が開始されていますが、開発の目標時期は特に定められていません。

◆連結納税制度の見直しへの対応
今後、実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」及び実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」の改廃の要否を検討するとともに、「所得税法等の一部を改正する法律」の成立日以後に決算日を迎える企業の会計処理についての対応の必要性の有無について検討が行われています。

(検討状況及び今後の計画)
2020年2月13日に実務対応報告公開草案第58号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」(コメント期限:2020年3月9日)が公表されてました。今後、実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」及び実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」の改廃を、2021年3月までに行うことが目標とされています。

◆金利指標改革に起因する会計上の問題
(検討状況及び今後の計画)
2019年11月よりヘッジ会計を中心として金利指標改革に関連する会計基準の開発に着手することが決定されました。2020年4月又は5月に公開草案を公表することが目標とされています。

◆金融商品取引法上の「電子記録移転権利」又は資金決済法上の「暗号資産」に該当する ICO トークンの発行・保有等に係る会計上の取扱い
(検討状況及び今後の計画)
2020年4月又は5月に公開草案を公表することが目標とされています。

その他の日本基準の開発に関する事項

◆開示に関する適用後レビューの実施
ASBJが開発する会計基準の適正手続(デュー・プロセス)は、公益財団法人財務計基準機構の理事会が定める「企業会計基準及び修正国際基準の開発に係る適正手続に関する規則」(以下「適正手続規則」という。)に規定されており、適正手続規則では、適用後レビューの実施が定められています。
ASBJは、「開示に関する適用後レビューの実施計画」を作成し、2017年12月26日に適正手続監督委員会に報告しています。

(今後の計画)
現在、「開示に関する適用後レビューの実施計画」に基づき適用後レビューの作業が実施されています。目標時期は特に定められていません。

3.修正国際基準

修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)は、IASBにより公表された会計基準及び解釈指針についてエンドースメント手続を実施することにより開発するものです。

(検討状況及び今後の計画)
IASB から公表済みの会計基準及び解釈指針について、エンドースメント手続を実施する時期を検討しています。
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4.参考資料

当該計画の詳細は、以下をご参照ください。
https://www.asb.or.jp/jp/project/plan.html

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