基準等の概要
国際財務報告基準とのコンバージェンスの観点から、賃貸等不動産の時価等の開示の内容を定めた本基準及び適用指針が平成20年11月28日に公表されました。
本基準等の適用により、賃貸等不動産を保有している場合には、財務諸表に時価等を注記しなければなりません。
なお、連結上、注記を行えば、個別上の注記は不要となります。また、この基準の適用は会計方針の変更にあたりません(会計基準35項)。ただし、追加情報として、当基準を適用している旨を注記することが考えられます。
賃貸等不動産の範囲
「賃貸等不動産」とは、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産(ファイナンス・リース取引の貸手における不動産を除く)をいい(会計基準4項)、次の不動産が含まれます(会計基準5項)。
- 貸借対照表において投資不動産として区分されている不動産
- 将来の使用が見込まれていない遊休不動産
- 上記以外で賃貸されている不動産
注記事項
賃貸等不動産を保有している場合には、以下の項目を注記します(会計基準8項)。
- 賃貸等不動産の概要
- 賃貸等不動産の貸借対照表計上額及び期中における主な変動
- 賃貸等不動産の当期末における時価及びその算定方法
- 賃貸等不動産に関する損益
ただし、賃貸等不動産の総額に重要性が乏しい場合には注記を省略することが可能です。
重要性の判定は保有する賃貸等不動産の時価を基礎とした金額と総資産(賃貸等不動産の含み損益反映後)比較して判断します。しかし、基準等では重要性に関する明確な数値基準は示されていないため、企業の状況等を勘案して判断基準を設ける必要があります。
時価の算定方法
時価とは①観察可能な市場価格に基づく価額、②市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額と定義されています(会計基準4項)
不動産は一般的には取引所などで取引される流動性の高い資産ではないため、①の観察可能な市場価格に基づく価額による表示は考えにくく、②の合理的に算定された価額を利用することになると考えられます。
合理的に算定された価額は①自社における合理的な見積もり又は②不動産鑑定士等による鑑定評価等をもって算定することになります(適用指針28項)
自社で時価算定する場合は、原則として「不動産鑑定評価基準」(国土交通省)に基づく方法、もしくは類似する方法による必要があります(適用指針11項)
以下の場合には原則的な時価算定以外の方法も認められます。
①契約による売却予定額がある場合(適用指針11項)
→売却予定額を時価とみなす
②第三者からの取得価額が適切で、長期間経過しておらず、一定の評価額や指標等に重要な変動が生じていない場合(適用指針12項)
→評価額や指標を用いて合理的に調整した金額を時価とみなす
③原則的な時価算定を行った後、長期間経過しておらず、一定の評価額や指標等に重要な変動が生じていない場合(適用指針12項)
→評価額や指標を用いて合理的に調整した金額を時価とみなす
④ ②や③で評価額や指標等の変動が軽微な場合(適用指針12項)
→調整せずに時価とみなすことができる
⑤個別不動産として重要性が乏しいもの(適用指針13項)
→評価額や指標等に基づく価額等を時価とみなす
適用時期
平成22年3月31日以降終了する事業年度の年度末から適用します。ただし、当該事業年度以前の事業年度の期首から適用することも可能です。