1.はじめに
平成29年9月22日に企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」)より「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」の改訂が公表されました。
2.日本基準
開発中の会計基準
◆収益認識に関する会計基準
平成26年5月に国際会計基準審議会(以下、「IASB」)及び米国財務会計基準審議会(以下、「FASB」)から「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)が公表されたことを踏まえ、日本基準の体系の整備を図り、日本基準を高品質で国際的に整合性のあるものとする等の観点から、収益認識に関する包括的な会計基準の開発について検討が行われています。
(検討状況及び今後の計画)
平成29年7月20日に、企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(コメント期限:平成29年10月20日)を公表しています。
今後、公開草案に対して寄せられたコメントへの対応を検討した後、平成30年3月までに最終基準化することを目標としています。
開発中の指針(実務上の取扱いを含む)
◆税効果会計に関する指針
日本公認会計士協会から公表されている税効果会計及び当期税金に関する実務指針について、基準諮問委員会からの提言に基づき、必要な見直しを行ったうえで、ASBJの適用指針等に移管することを目的として検討が進められています。
(検討状況及び今後の計画)
税効果会計に関する実務指針のうち、以下に関してはASBJの適用指針への移管が完了しています。
◇繰延税金資産の回収可能性について
平成27年12月28日
企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を公表
◇税効果会計に適用する税率の取扱いについて
平成28年3月14日
企業会計基準適用指針第27号「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」を公表
◇当期税金に関する取扱いについて
平成29年3月16日
企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」を公表
(検討状況及び今後の計画)
平成29年6月6日に、企業会計基準公開草案第60号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」等を公表し、平成29年8月7日にコメントを締め切っています。
現在、公開草案に寄せられたコメントへの対応を検討しており、平成29年12月までに最終基準化することを目標としています。
◆マイナス金利に関連する会計上の論点への対応
マイナス金利に関する会計上の論点のうち、退職給付債務の計算における割引率について、会計上の取扱いを明確化することを目的として検討を行っています。
平成29年3 月31日に終了する事業年度から平成30年3月30日に終了する事業年度の取扱いに関しては、平成29年3月29日に、実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」を公表しています。
(検討状況及び今後の計画)
平成30年3月31日以後に終了する事業年度の取扱いに関しては、利回りの下限としてゼロを利用する方法とマイナスの利回りをそのまま利用する方法のいずれかの方法によることを定めたガイダンスの公表に向けて、平成29年11月頃に公開草案を公表することを目標として検討を行っています。
◆仮想通貨に係る会計上の取扱いに関する指針
仮想通貨交換業者に対する財務諸表監査制度の円滑な運用の観点、及び会計処理が明確にされない場合には多様な会計実務が形成される可能性がある点を踏まえ、仮想通貨交換業者及び仮想通貨の利用者における仮想通貨に係る会計上の取扱いについて検討を行っています。
(今後の計画)
平成29年11月頃に公開草案を公表することを目標として検討を行っています。
◆その他、開発中の指針
その他、開発中の指針は以下の通りです。
■一括取得型による自社株式取得取引に係る会計処理に関する指針
■権利確定条件付きで従業員等に有償で発行される新株予約券の企業における会計処理に関する指針
■実務対応報告第18号の見直し
今後、開発予定の会計基準または指針(実務上の取扱いを含む)
開発目標時期は特に定められていないものの、現在、以下の2つの会計基準または指針について検討を行うことが予定されています。
◆「企業結合に関する会計基準」に係る条件付取得対価の取扱い
企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」に係る条件付取得対価の一部が返還される場合の取扱いを検討することを予定しています。
◆子会社株式及び関連会社株式の減損とのれんの減損の関係
日本公認会計士協会から公表されている会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」に定められる連結財務諸表におけるのれんの追加的な償却処理について、子会社株式及び関連会社株式の減損とのれんの減損の関係を踏まえ検討することを予定しています。
今後、開発に着手するか否かを判断するもの
◆金融商品及び公正価値測定に関する会計基準
中期運営方針では「日本基準を国際的に整合性のあるものとするための取組みに関する今後の検討課題」として、IFRS第9号「金融商品」、IFRS第10号「連結財務諸表」、IFRS 第13号「公正価値測定」及び IFRS第16号「リース」について記載されています。
このうち、IFRS第9号「金融商品」については、適用に関する実務上の懸念の把握や着手するとした場合に3つの領域(①金融資産及び金融負債の分類及び測定、②金融資産の減損会計、及び③一般ヘッジ会計)を同時に扱うべきか等の検討を行い、その後、我が国における会計基準の改訂に向けた検討に着手するか否かの検討を行うとしています。
また、IFRS第13号「公正価値測定」については、適用に関する実務上の懸念の把握や国際的な会計基準と整合性を図ることに対する必要性に関する検討を行い、その後、基準開発に向けた検討に着手するか否かの検討を行うとしています。
(今後の計画)
IFRS第9号「金融商品」については IFRS第9号「金融商品」(2014年)に関するエンドースメント手続の実施後に、また、IFRS第13号「公正価値測定」については IASB が実施している IFRS第13号「公正価値測定」の適用後レビューに関する情報要請への対応後に、それぞれ検討を開始することを予定しています。
その他の日本基準の開発に関する事項
◆開示に関する適用後レビューの実施
ASBJが開発する会計基準の適正手続(デュー・プロセス)は、公益財団法人財務会計基準機構の理事会が定める「企業会計基準及び修正国際基準の開発に係る適正手続に関する規則」(以下「適正手続規則」という。)に規定されており、適正手続規則では、適用後レビューの実施が定められています。
当委員会は、適用後レビューの計画の策定にあたり、平成29年1月12日に、「企業会計基準等に関する適用後レビューの計画策定についての意見の募集」を公表し、平成29年6月22日に、「適用後レビューの計画策定に係る意見募集文書に寄せられたコメントへの対応の取りまとめ」を公表しています。
当該取りまとめの文書では、今後、開示に関する適用後レビューを実施する方向性で、詳細な計画を策定することを記載しています。
(今後の計画)
開示に関する適用後レビューの詳細な計画を策定し、適正手続監督委員会に報告。その後、適用後レビューを実施するとしています。目標時期は特に定められていません。
3.修正国際基準
以下の基準に関するエンドースメント手続が順次進められている状況です。
◇IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」
修正国際基準公開草案第4号「『修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)』の改正案」(平成29年6月20日公表)のコメントを平成29年8月21日に締め切り、現在、公開草案に寄せられたコメントへの対応を検討しています。平成29年10月頃に最終基準化することを目標として検討を進めています。
◇IFRS第9号「金融商品」(2014年)
平成29年10月から11月頃に修正国際基準の改正の公開草案を公表することを目標として検討を進めています。
◇IFRS第16号「リース」
本年内に開始する予定です。
4.参考資料
当該計画の詳細は、以下をご参照ください。
https://www.asb.or.jp/jp/project/plan.html