東証がコーポレートガバナンス・コードを公表

【1.コーポレートガバナンス・コードの公表】
平成27年5月13日、東京証券取引所は「コーポレートガバナンス・コード」(以下、「コード」)を公表しました。併せて、有価証券上場規定等も改正されています。

【2. 公表の経緯・目的】
平成26年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略 改訂版2014」において、重点分野としてコーポレートガバナンスの強化が掲げられたことに基づき、我が国の成長戦略の一環として策定されました。
コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実施に資する主要な原則を盛り込んだものであり、会社の受託者としての責務に関する説明責任を果たすことを含め、会社の意思決定の透明性・公正性を担保すること、及び迅速果敢な意思決定を促すことを通じて、「攻めのガバナンス」の実現を目指すことを目的としています。

【3. 特に留意すべき点】
(1)コンプライ・オア・エクスプレイン
コードは、法令とは異なり法的拘束力を有する規範ではなく、上場会社は、コードを実施するか、実施しない場合には、その理由を説明すること(「コンプライ・オア・エクスプレイン」)が求められています。
コードの適用において、全ての原則を一律に実施することが求められているものではないということには十分な留意が必要です。
会社側および株主等のステークホルダー側において、それぞれ以下の点に留意する必要があります。

≪会社側≫
 ・「実施しない理由」の説明を行う際には、実施しない原則についての自らの対応について、株主等のステークホルダーが十分納得できるような説明を行うことが求められている。
 ・「ひな形」的な表現により表層的な説明に終始することは「コンプライ・オア・エクスプレイン」の趣旨に反する。
≪株主等のステークホルダー側≫
 ・会社の個別の状況を十分に尊重することが求められる。
 ・コードの一部を実施していないことのみをもって、実効的なコーポレートガバナンスが実現されていない、と機械的に評価することは適切ではない。

(2)コードの適用対象
東証一部、二部上場会社については、コードの基本原則・原則・補充原則のすべてについて実施するか、実施しない場合の説明が求められています。マザーズおよびジャスダックの上場会社については基本原則のみとされています。

(3)コードの尊重
「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」の尊重規定は、コードの趣旨・精神の尊重規定に置き換えます。

(4)独立役員の独立性に関する情報開示の見直し
コードでは、上場会社が独立役員を指定する場合には、独立役員と上場会社との間の特定の関係の有無及びその概要を開示するものとされています。
これまで、主要な取引先の元業務執行者など、過去において上場会社と特定の関係を有していた独立役員について求められてきた、それでもなお独立性ありと判断した理由の説明(いわゆる「開示加重要件」)は要求されないことになりました。
これらの見直しは、すべての独立役員について等しく情報の開示を求めることにより、上場会社が独立性を判断する際における過度に保守的な運用を是正しようとするものです。

(5)適用時期
改正された規定等は、平成27年6月1日より適用されます。
上場会社は、定時株主総会後、遅滞なくコーポレート・ガバナンス報告書を提出することとされています。適用に当たっては、平成27年6月以後最初に開催する定時株主総会については準備ができ次第速やかに提出することとし、遅くともその6か月後までに提出するものとされているため、適用が最も早い平成27年3月期決算の会社の場合、平成27年12月末までに開示すれば良いことになります。

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