1.基準公表の経緯
料金規制事業を営む企業は、それ以外の企業が費用として認識する支出を資産として繰り延べたり、損益及び包括利益計算書上に認識するものを繰り延べることを許容又は要請されています。そして、資産計上又は収益の繰延処理を行った項目は、実務上様々な方法により表示されています。
既にIFRSを適用する企業の殆どでは、これらの料金規制に基づく繰延勘定に対するIFRSの基準はないものの、これを財務諸表上消去しています。しかし、これからIFRSを適用する国又は法域においては、当該繰延勘定に対するIFRSの基準の欠如がIFRSを適用することの足枷とならないよう、IFRS第14号「規制繰延勘定」が公表されました。
2.基準の概要
(1)会計処理
以下の①~③の条件に該当する企業は、IFRSを適用する前の会計基準に基づく会計処理をそのまま継続できます。すなわち、従前の会計基準において認識及び測定していた繰延勘定は、IFRS初度適用後も従前の会計基準によって認識、測定、減損、及び認識の中止を行うことが出来ます。
当該会計処理を適用できる条件とは、以下の全てを満たす場合です。
① IFRS初度適用企業
② 料金規制事業を営む
③ 従前の会計基準に基づき財務諸表上規制繰延勘定として適格である金額を認識
なお、上述の条件を全て満たす企業が従前の会計基準における会計処理を継続適用できるのは、IASBにおける規制繰延勘定に関する基準開発プロジェクトが完了するまでです。
また、従前の会計方針を変更する場合は、財務諸表が、その利用者の経済的意思決定により適切になるとともに、財務諸表の信頼性を損なわないかより向上する場合に限られます。
(2)表示及び開示
財務諸表上の表示について
規制繰延勘定は、他の項目には含めずに別掲します。具体的には、財政状態計算書上では、流動項目及び非流動項目合計を表す小計の後に、規制繰延勘定に関する借方残高合計、及び貸方残高合計が個別に表示されます。
一方、損益及び包括利益計算書上では、収益及び費用の純額を表す小計の後に、損益に影響しないものを除く規制繰延勘定残高の報告期間における純変動額が、特定の事象が発生した場合に損益へリサイクリングされるもの、及びされないものとして個別に表示されます。
開示について
開示については、財務諸表利用者が料金規制にかかる性質やリスク、及び財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに対する料金規制の影響を評価できる情報を開示する必要があります。
例えば、料金規制にかかる説明には、その性質、料金規制活動の範囲、料金設定プロセスの規制の性質等が含まれます。