「無形資産に関する検討経過の取りまとめ」の公表について

1.はじめに

平成25年6月28日に、企業会計基準委員会より「無形資産に関する検討経過の取りまとめ」が公表されました。

これまで企業会計基準委員会は、IFRSとのコンバージェンスの観点を念頭に置いて無形資産に関する会計基準の検討を行ってきました。このたび公表された無形資産に関する検討経過の取りまとめは、今後の無形資産に関する検討に資することを目的として作成されたものです。

2.検討経過の取りまとめと議論された個別論点の概要

主要な論点として、「他社からの研究開発の成果を個別に取得した場合の取扱い」及び「企業結合時に識別される無形資産の取扱い」等の議論が行われましたが、いずれも当面は現状の会計処理を維持することとされました。

以下は、これまでの個別論点に関する検討経過です。

(1)無形資産の定義、認識要件

我が国では、無形資産全般の定義や認識要件は明示されていません。
一方、米国基準及びIFRSには定義や認識要件があります。

これらの基準を踏まえた検討が行われたものの、現状では個別の論点(「企業結合時に識別される無形資産の取扱い」及び「他社からの研究開発の成果を個別に取得した場合の取扱い」)についての検討を優先するとされたため、その後は無形資産の定義及び認識要件についての検討は行われていません。

(2)社内開発費の取扱い

我が国の研究開発費等会計基準では、研究開発費はすべて発生時に費用処理すると定められています。
また、米国基準も同様の取扱いですが、IFRSでは研究局面と開発局面に分けたうえで、開発局面のうち一定の要件を満たすものは資産計上を行うと定めています。

これを受けて審議及び開示例の調査が行われたものの、実務では幅広い取扱いが行われていることがわかりました。そこで、社内開発費については当面の間現状維持としつつ、今後も各社に対するリサーチ活動を継続することとされました。

(3)企業結合時に識別される無形資産の取扱い

我が国の企業結合会計基準では、受け入れた資産に法律上の権利など分離して譲渡可能な無形資産が含まれる場合には、識別可能なものとして取扱い、当該無形資産に配分することとされています。

しかし、現行は、のれんや無形資産の計上額に関する買収時及び買収後の情報が不足しており、買収に対する評価が難しい状況であるとの意見が財務諸表作成者の中から示されています。
また、我が国の会計基準においては識別すべき無形資産の例示が少ないことや、測定の客観性の問題から、識別できる無形資産のすべてを計上可能かどうか不透明であるなど、無形資産の識別の実務で不統一が生じている可能性があるとの意見も示されています。

これについて、我が国の会計基準の見直しを行った場合のベネフィットとコストの検討を行った結果、いずれの評価に関しても意見が大きく分かれている状況であり、現状では一定の方向性を打ち出す状況には必ずしもないと考えられました。このため、継続的な検討課題とされました。

(4)他社から研究開発の成果を個別に取得した場合の取扱い

我が国では、他社から個別に買い入れた研究開発の成果は、発生時に費用処理するものと定められています。
また、米国基準も同様の取扱いですが、IFRSでは個別に取得した仕掛研究開発は資産計上されるものと定められています。

これを踏まえて検討を行った結果、買い入れた無形資産は経済的便益をもたらす可能性が高いと考えられる一方で、そもそも研究開発支出は将来の収益獲得に不確実性があるからこそ我が国では費用処理を行う取扱いであるとの考え等があることから、当面の間は現状維持(すべて費用処理)とし、将来的に社内開発費の会計処理の検討が行われる場合には、その際に併せて検討することとされました。

(5)耐用年数が確定できない無形資産の取扱い

我が国では、耐用年数が確定できない無形資産の取扱いは定められていません。
一方、米国基準では、耐用年数が確定できない状態ではないと決定されるまで償却を行ってはならないとされ、IFRSにおいても同様の取扱いです。

なお、当該論点に関する検討は従前行われたものの、現在は検討が行われていません。

(6)その他の論点

その他の論点として、借地権及び繰延資産の取扱いに関する議論が行われました。これらの我が国における取扱いは、国際的な会計基準における取扱いとは異なることが認識されています。但し、現在は検討が行われていません。

当該資料は、以下より入手できます。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/press_release/domestic/sme20/sme20.pdf

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