基準等の概要
本会計基準は、財務諸表における包括利益及びその他の包括利益の表示について定めることを目的として平成22年6月30日に公表されました。
「包括利益」とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分と定義されています(4項)。当該企業の純資産に対する持分所有者には、株主のほか、新株予約権者、連結財務諸表においては、少数株主も含まれます。
「その他の包括利益」とは、包括利益のうち当期純利益及び少数株主損益に含まれない部分と定義されています(5項)。その他の包括利益は、個別財務諸表においては包括利益と当期純利益との間の差額であり、連結財務諸表においては包括利益と少数株主損益調整前当期純利益との間の差額になります。連結財務諸表におけるその他の包括利益には、親会社株主に係る部分と少数株主に係る部分が含まれます。
包括利益を表示する計算書は、次のいずれかの形式から選択することになります。
【2計算書方式】当期純利益を表示する損益計算書と、包括利益を表示する包括利益計算書からなる形式
【1計算書方式】当期純利益の表示と包括利益の表示を1 つの計算書(「損益及び包括利益計算書」)で行う形式
【2計算書方式】 | 【1計算書方式】 | |||
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<連結損益計算書> | <連結損益及び包括利益計算書> | |||
売上高 | 10,000 | 売上高 | 10,000 | |
税金等調整前当期純利益 | 2,200 | 税金等調整前当期純利益 | 2,200 | |
法人税等 | 900 | 法人税等 | 900 | |
少数株主損益調整前当期純利益 | 1,300 | 少数株主損益調整前当期純利益 | 1,300 | |
少数株主利益 | 300 | 少数株主利益(控除) | 300 | |
当期純利益 | 1,000 | 当期純利益 | 1,000 | |
<連結包括利益計算書> | 少数株主利益(加算) | 300 | ||
少数株主損益調整前当期純利益 | 1,300 | 少数株主損益調整前当期純利益 | 1,300 | |
その他の包括利益: | その他の包括利益: | |||
その他有価証券評価差額金 | 530 | その他有価証券評価差額金 | 530 | |
繰延ヘッジ損益 | 300 | 繰延ヘッジ損益 | 300 | |
為替換算調整勘定 | △180 | 為替換算調整勘定 | △180 | |
持分法適用会社に対する持分相当額 | 50 | 持分法適用会社に対する持分相当額 | 50 | |
その他の包括利益合計 | 700 | その他の包括利益合計 | 700 | |
包括利益 | 2,000 | 包括利益 | 2,000 | |
(内訳) | (内訳) | |||
親会社株主に係る包括利益 | 1,600 | 親会社株主に係る包括利益 | 1,600 | |
少数株主に係る包括利益 | 400 | 少数株主に係る包括利益 | 400 |
適用時期
平成23年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用します。
ただし、①その他の包括利益の内訳項目別の税効果の金額の注記(8項)、及び②当期純利益を構成する項目のうち、当期または過去の期間にその他の包括利益に含まれていた部分(組替調整額)の注記(9項)については平成24年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用します。
また、平成22 年9 月30 日以後に終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から早期適用することが可能とされています。
適用初年度においては、直前の年度における包括利益及びその他の包括利益の内訳項目の金額を注記する必要があります。ただし、直前の年度における①②の注記については不要とされています。
なお、個別財務諸表への適用については、本会計基準の公表から1年後を目途に判断することとされています(14項)。