公開草案「認められる減価償却(償却)方法の明確化」 IAS第16号及びIAS第38号の改訂案

1.はじめに

2012年12月4日に、IASB(国際会計基準審議会)よりIAS第16号「有形固定資産」及びIAS第38号「無形資産」のうち、減価償却(償却)に対する部分的な改訂案が公表されました。

当該草案は、2013年4月2日まで広く一般からのコメントを受け付けています。また、コメントを踏まえて必要に応じた修正を行い、IAS第16号及びIAS第38号に組み込まれる予定です。

 2.提案された改訂のポイント

提案された改訂の主要ポイントは、以下の2点です。

  •  収益を基礎とする減価償却(償却)方法は不可
  •  定率法の適用を行う上で、資産から生み出される製品又はサービスの将来における予想販売単価の下落と、資産の将来の経済的便益の消費パターン、及び耐用年数の見積りとの関連を明確化

 今回の改訂は、現行基準の実質的な変更ではなく、減価償却(償却)に関するルールをより明確化するものです。

3.収益を基礎とする減価償却(償却)方法

 ①現行基準について

IAS第16号「有形固定資産」及びIAS第38号「無形資産」において、資産の減価償却(償却)は、資産の将来の経済的便益が企業によって消費されると予測されるパターンを反映するものでなければならない旨、定められています。

 ②収益を基礎とした方法による減価償却(償却)の適用不可

収益を基礎とした減価償却(償却)方法とは、販売数量と販売単価に将来の予想販売単価の変化を考慮に入れて償却額を決定する方法です。

 今回の公開草案において、収益を基礎とする方法による減価償却(償却)方法は適用されるべきではないことが提案されています。

 その理由として、減価償却(償却)は、資産の将来の経済的便益の消費パターンを反映する方法により行われるべきであるものの、収益に基づく方法は、資産の将来の経済的便益の生成パターンを反映する方法であるためです。

 なお、IASBは、収益を基礎とする減価償却(償却)を使用できる余地があるか否か検討しました。この結果、当該方法が生産高比例法と同様の結果をもたらす場合のみ、使用できるとしています。

 また、取得した映画の上映権のような知的財産権については、時の経過に基づく定額法は不適切であるとしています。その理由は、このような知的財産権の場合、初期に大幅に価値が下落し、その後は緩やかに逓減するからです。このため、係る状況においては視聴者数に基づく方法も適切な方法になり得るとしています。

 4.定率法について

 今回公表された公開草案では、定率法の適用において、予想される製品又はサービスの将来販売単価の下落に関する情報を考慮すべき事項として明確化することが提案されています。

具体的には、以下の事項を明確化することが提案されています。

  •  定率法を適用する際に、製品又はサービスの産出に係る技術的又は経済的陳腐化の情報は、資産の将来の経済的便益の消費パターン耐用年数の見積りの双方に関連します。
  •  製品又はサービスの予想される将来における販売単価の下落は、技術的又は経済的陳腐化の結果将来の経済的便益が減少する指標となり得えます。

 5.発行日及び経過措置

 今回公表された提案が基準として確定する時期は未定です。

但し、基準として確定したのち適用が行われる際は、遡及適用(注)を行うこと、及び早期適用は認められることが提案されています。

 (注)遡及適用とは、会社設立当初まで遡って、当初から変更後の会計処理を適用していたとの前提の下、再計算を行うことです。

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