改訂IAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」の概要

投資先に対する共同支配又は重要な影響力

持分法が適用されるのは、以下の2つの場合です。

① 投資先に対して共同支配を有する共同支配企業

共同支配は、投資先のリターンに重要な影響を及ぼす活動に関する意思決定が、契約に基づき、支配を共有している当事者の全員一致の合意を必要とする場合にのみ存在します。

なお、共同支配を有する当事者は、純資産に対して権利を有します

② 重要な影響力を有する投資先

重要な影響力とは、投資先の財務及び影響の方針決定に参加するパワーであるが、支配又は共同支配にはあたらないものをいいます。

投資先に対し直接又は間接的に保有する議決権が20%以上である場合、通常は重要な影響力があると判断されます。

重要な影響力を判断する際に、日本基準と異なりIFRSでは潜在的議決権(株式転換権等)の存在及び影響も考慮します。

会計処理

(1)会計処理に関する要求事項

持分法に関する会計処理上の要求事項の多くは、IFRS上の連結に関する要求事項と同一です。

例えば、以下の事項があげられます。

  • 会計方針の統一
  • 決算日の統一
  • 会計処理上の持分を決定する際に、潜在的議決権は考慮しない (あくまで支配、重要な影響力の有無を判定する際に考慮するのみ)

一方、連結とは以下の点で相違があります。

  • 投資先に対する持分がマイナスになった場合、基本的に投資企業は当該マイナス持分を負担しない (⇔連結は負担する)
  • 重要な影響力を維持した状態における持分割合の減少については、会計処理規定がない (⇔連結は資本取引との規定有)

(2)日本基準との相違点

日本基準との主要な相違点は、IFRSではのれんが非償却であることです。

なお、IFRSでは日本基準同様、のれん相当額は投資の帳簿価額に含まれます。

このとき、投資が減損している可能性が示唆されている場合には、投資全体の帳簿価額と回収可能価額との比較により減損テストが実施されます。

基準改訂の経緯

IAS第28号は、2011年5月に改訂されました。

改訂の理由は、主として以下の2点です。

① 共同支配を行う投資先に対する会計処理の選択性排除

従前のIAS第31号「ジョイント・ベンチャーに対する持分」では、共同支配を行う投資先に対する会計処理として、比例連結と持分法を選択することが可能でした。

しかし、IAS第31号をIFRS第11号「共同支配の取決め」へ差し替え、当該投資先に対する権利の種類に応じて会計処理の選択肢を排除し、以下の通り適用できる会計処理を特定しました。

A)    投資先の純資産に対して権利を有する場合(共同支配企業) ⇒ 持分法を適用

B)      投資先の資産に対して権利を、負債に対して義務を有する場合(共同支配事業) ⇒ 比例連結を適用

この結果、同様の取引が異なる方法で会計処理されなくなり、財務諸表の比較可能性が向上することが期待されます。

② ベンチャー・キャピタル企業等が保有する投資に対する持分法適用除外規定を廃止

従来は、ベンチャー・キャピタル企業等が保有する投資について、持分法の適用が除外されていました。

しかし、当該除外規定は、これらの企業が共同支配の取決めの特徴を有していない、又はこれらの投資が関連会社ではないという事実に基づくものではなく、持分法で評価するか、公正価値で評価するかに関する測定上の問題であると考えられました。

この結果、ベンチャー・キャピタル企業等は持分法又は公正価値測定を選択することとされました。(但し、今後改訂される可能性があります。)

以上より、基準の改訂は主として持分法適用企業又は範囲について行われています。

従って、持分法の会計処理方法自体に、従前の持分法に関する基準から大きく異なる点はありません

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