改訂IAS第19号「従業員給付」②

※ 改訂IAS第19号「従業員給付」①に引き続き、ここでは、改訂IAS第19号「従業員給付」において定められている確定給付制度の概要について解説します。

※ 解説の便宜上、日本基準で使用されている用語とIFRSの用語の内容が同一である場合は、基本的に日本基準で使用されている用語を用いて記載しています。

退職給付債務及び当期勤務費用

退職給付債務及び当期勤務費用を算定するうえで、主として以下の点でIFRSと日本基準は相違します。

① 退職給付の各期への配分(基本的方法)

  • IFRS : 各勤務期間に発生した退職給付債務の金額を、当期勤務費用として認識
  • 日本基準 : 入社日から退職日までに発生する退職給付債務を、期間定額按分

② 数理計算上の仮定として用いられる割引率

  • IFRS : 基本的に優良社債の利回りを参照、重要性基準なし
  • 日本基準 : 国債の利回りを参照することが一般的、重要性基準あり

(注)重要性基準とは、期首と期末の割引率による退職給付債務の差が10%未満と推測される場合、期首の割引率を使用することが出来るもの。

年金資産

年金資産の取扱いについては、IFRSと日本基準はほぼ同一です。

なお、IFRSでは、未収掛金についてはいかなる場合であっても年金資産には含まれない点で、日本基準とは相違します。

退職給付費用の構成要素

IFRSでは、退職給付費用は、以下の3つに分類され、その取扱いは以下の通りです。

① 勤務費用(過去勤務債務含む) : P/L計上

② 退職給付引当金に係る純利息  : P/L計上

③ 退職給付引当金の再測定    : OCI計上

(注)③には数理計算上の差異が含まれます。

数理計算上の差異及び過去勤務債務は、日本基準及び改訂前のIAS第19号において遅延認識が認められていました。

一方、改訂後のIAS第19号では、遅延認識が認められていません。

このため、発生時において即時OCI(数理計算上の差異)、又はP/L(過去勤務債務)計上を行う必要があります。

また、OCIは、その後においてP/Lへ振り替えることは禁止されています。

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