「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」等の改訂

改訂の概要

実務界からの要請を受け、平成23年3月30日に企業会計審議会より「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」等の改訂が公表されました。この改訂により、内部統制への対応が相当程度明確化・簡素化されています。

主な改訂内容 

開示すべき重要な不備(重要な欠陥から変更)の判断基準の明確化【実施基準Ⅱ1②】

  •  連結総資産、連結売上高、連結税引前利益などは、評価対象年度のみならず、それぞれの過去の一定期間における実績値の平均値を含むことに留意する。
  •  また、例年と比較して連結税引前利益の金額が著しく小さくなった場合や負になった場合には、必要に応じて監査人と協議の上、例えば5%ではなく、必要に応じて比率の修正や指標の変更を行うことや連結税引前利益において特殊要因等を排除することがあり得ることに留意する。

 評価範囲の明確化、絞込み

  全社的な内部統制の評価範囲【実施基準Ⅱ2(2)】

  •  例えば、売上高で全体の95%に入らないような連結子会社は僅少なものとして、評価の対象からはずすといった取扱いが考えられるが、その判断は、経営者において、必要に応じて監査人と協議して行われるべきものであり、特定の比率を機械的に適用すべきものではないことに留意する。
  • また、売上高の一定比率といった基準をすべての連結子会社に適用するのではなく、各連結子会社の事業の内容等に応じ、異なる基準を適用する方法も考えられる。

 業務プロセスの評価範囲(重要な事業拠点の選定)【実施基準Ⅱ2(2)①】

  •  事業拠点を評価範囲に加えるか否かの判断基準となる一定割合については、当該事業拠点が前年度に重要な事業拠点として評価範囲に入っており、(イ)前年度の当該拠点に係る内部統制の評価結果が有効であること、(ロ)当該拠点の内部統制の整備状況に重要な変更がないこと、(ハ)重要な事業拠点の中でも、グループ内での中核会社でないなど特に重要な事業拠点でないことを確認できた場合には、当該事業拠点を本年度の評価対象としないことができると考えられる。その場合は、結果として、売上高等の概ね2/3を下回ることがあり得る。

評価対象とする業務プロセスの識別【実施基準Ⅱ2(2)②】

  •  重要な事業拠点における企業の事業目的に大きく関わる勘定科目に至る業務プロセスの評価範囲については、経営者が重要な虚偽記載の発生するリスクを勘案して、企業ごとに判断すべきである。例えば、「売上を企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」としている場合において、売上に至る業務プロセスの金額を合算しても連結売上高の概ね5%程度以下となる業務プロセスを、重要な事業又は業務との関連性が低く、財務報告に対する影響の重要性も僅少なものとして評価の対象からはずすといった取扱いはありうるものと考えられる。なお、この「概ね5%程度」については機械的に適用すべきではないことに留意する。

 評価対象からの除外、評価範囲の制約【実施基準Ⅱ2(2)①】【実施基準Ⅱ3(6)】

  •  買収・合併、災害等により評価作業を実施することが困難な事情がある事業拠点については評価対象から除外できるが、その時期を「期末日直前」から「下期」に改訂。評価範囲の制約が認められる「やむを得ない事情」についても同様である。
  • なお、「下期」はあくまでも例示であり、該当する事象が発生したが内部統制報告書作成日までに、やむを得ず評価を完了することができない場合でその合理性が認められるときには、「下期」に限られないことに留意する。

 全社的な内部統制の評価【実施基準Ⅱ3(2)①】

  •  全社的な内部統制の評価項目(財務報告の信頼性に特に重要な影響を及ぼす項目を除く)のうち、前年度の評価結果が有効であり、かつ、前年度の整備状況と重要な変更がない項目については、その旨を記録することで、前年度の運用状況の評価結果を継続して利用することが出来る。 (この場合、数年に一度運用状況の評価を実施)

 業務プロセスに係る内部統制の整備状況の有効性の評価【実施基準Ⅱ3(3)③】

  • 全社的な内部統制の評価結果が有効である場合には、統制上の要点として識別された内部統制(財務報告の信頼性に特に重要な影響を及ぼす項目を除く)のうち、前年度の評価結果が有効であり、かつ、前年度の整備状況と重要な変更がない項目については、その旨を記録することで、前年度の整備状況の評価結果を継続して利用することが出来る。 (この場合、数年に一度整備状況の評価を実施)

 業務プロセスに係る内部統制の運用状況の有効性の評価【実施基準Ⅱ3(3)④】

  •  全社的な内部統制の評価結果が有効である場合には、統制上の要点として識別された内部統制(財務報告の信頼性に特に重要な影響を及ぼす項目を除く)のうち、前年度の評価結果が有効であり、かつ、前年度の整備状況と重要な変更がない項目については、その旨を記録することで、前年度の運用状況の評価結果を継続して利用することが出来る。 (この場合、数年に一度運用状況の評価を実施)
  • 事業規模が小規模で、比較的簡素な構造を有している組織等運用状況の評価においては、特にそれぞれの状況に応じ、評価方法を工夫して効率的に実施することができる。例えば、適切な全社的な内部統制が整備及び運用されていることを前提に、一律に、通期において業務プロセスに係る内部統制については運用状況の評価が求められるものではない。また、組織内における各階層において必ず評価が求められるものではない。

ITを利用した内部統制の整備状況及び運用状況の有効性の評価【実施基準Ⅱ3(3)⑤】

  • IT全般統制の項目(財務報告の信頼性に特に重要な影響を及ぼす項目を除く)のうち、前年度の評価結果が有効であり、かつ、前年度の整備状況と重要な変更がない項目については、その旨を記録することで、前年度の運用状況の評価結果を継続して利用することが出来る。 (この場合、数年に一度IT全般統制の運用状況の評価を実施)

 適用時期等

  • 改定基準及び改訂実施基準は、平成23年4月1日以後開始する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用されます。
  • 内部統制監査の実務の指針については、日本公認会計士協会において、関係者とも協議の上、適切な手続きの下で、早急に作成されることが要請されています。

以上

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