改正の概要
平成23年7月1日に、日本公認会計士協会から、後発事象に関する監査基準委員会報告書の新起草方針に基づく改正版「監査基準委員会報告書第59号『後発事象』」(以下「本報告書」)が公表されました。
本報告書は、改正版国際監査基準との整合性を踏まえて、後発事象に関する監査手続を監査基準委員会報告書として新設されたものです。なお現行の、監査・保証実務委員会報告第76号「後発事象に関する監査上の取扱い」は、当面の間、本報告書と併せて適用されることとなります。
主な改正内容
全体的な特徴
本報告書は、財務諸表監査における後発事象全般に関する実務指針を提供するものです。
さらに、本報告書では、修正後発事象・開示後発事象とは別に、「事後判明事実」(監査報告日後に監査人が知るところとなり、監査報告日現在に気付いていたとしたら監査報告書を修正する原因となった可能性のある事実)に関する実務指針を提供しています。
個別的な特徴
①事後判明事実
監査人が上述の「事後判明事実」を知るところとなった場合、監査手続の実施が要求されます。本報告書では、事後判明の時期を以下の2つに分けて、実施しなければならない手続きを記載しています。
- 監査報告書日の翌日から財務諸表の発行日までの間
- 財務諸表が発行された後
②財務諸表の承認日
財務諸表の承認日は、「関連する注記を含むすべての財務諸表が作成されており、認められた権限を持つ者が、当該財務諸表に対する責任を認めた日付」と定義されます(第4項(2))。
具体的には、財務諸表の承認日は、経営者が実施した後発事象の評価期間の末日を指し、通常、経営者確認書の日付となります(A2項)。なお、株主総会または取締役会による財務諸表の最終承認は、財務諸表の承認日には該当しないとされています。
③ 監査報告書日
監査報告書日は、財務諸表の承認日より前の日付とすることはできません(A3項)。
④ 財務諸表の発行日
財務諸表の発行日とは、「監査報告書と監査した財務諸表を第三者が入手可能となる日付」と定義されます(第4項(4))。具体的には、金融商品取引法においては有価証券報告書の提日、会社法においては招集通知の発送日又はウェブサイト掲載日のいずれか早い方の日が該当します。
⑤ 二重日付
監査人は以下の条件を両方とも満たす場合、事後判明事実に関する監査手続を、当該修正又は開示に限定して実施することが認められます。
- 法令等又は財務報告の枠組みにおいて、事後判明事実の影響に限定した財務諸表の修正又は財務諸表における開示が禁止されていない。
- 財務諸表に対して責任を有する者が、当該修正又は開示に限定して承認することが禁止されていない。
⑥ 監査報告書への依拠を防ぐための監査人の措置
事後判明事実について、監査人が必要と判断した必要な対応を経営者が行わない場合、監査人は、財務諸表の利用者による監査報告書への依拠を防ぐための適切な措置を講じなければならないとされています(第12項、第16項)。
我が国における適切な措置しては、監査役等への報告、株主総会での意見陳述、監査契約の解除等が挙げられます(A12項、A13項)。
適用時期
平成23年7月1日に発効し、平成23年9月30日以後終了する中間会計期間に係る中間監査及び平成24年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用されます。