「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」等の改正

改正の概要

平成23年3月29日、日本公認会計士協会より、以下の実務指針等の改正が公表されました。これは、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」及び企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」等に対応するための見直しを行ったものです。

改正された実務指針等

  • 会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」
  • 会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」
  • 会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」
  • 「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」
  • 「金融商品会計に関するQ&A」
  • 「税効果会計に関するQ&A」

「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の公表に伴う改正

主な改正内容は次のとおりです。

「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」

為替予約等の会計処理において、振当処理から金融商品会計基準による原則的処理に変更する場合の取扱いが削除されました(第50項)。

「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」

<見込販売数量(又は見込販売収益)を変更した場合におけるソフトウェアの減価償却の方法>

  •  市場販売目的のソフトウェアの見込販売数量(又は見込販売収益)に変更した場合の減価償却額の計算式が、第2四半期末に変更した場合の例示に変更されました(第19項)。
  •  自社利用のソフトウェアについて、利用可能期間を見直す場合の減価償却額の計算式が、当事業年度末に耐用年数を変更した場合の例示に変更されました(第21項)。
  • 当初予見することのできなかった原因により見込販売数量(又は見込販売収益)の著しい減少が見込まれる場合の取扱い(一時の費用又は損失として処理する)が削除されました(第19項)。同時に設例4も削除されました。
  • 自社利用のソフトウェアの価値減少部分を一時の費用又は損失して処理する場合の取扱いが削除されました(第21項)。
  • 経過措置(第24、25項)が削除されました。
  • 過去に見積った見込販売数量がその時点での合理的な見積りに基づくものではなく、これを事後的に合理的な見積りに基づいたものに変更する場合には、会計上の見積りの変更ではなく「過去の誤謬の訂正」に該当します(第19項)。
  • 耐用年数の変更について、過去に見積った耐用年数がその時点の合理的な見積りに基づくものではなく、これを事後的に合理的な見積りに基づいたものに変更する場合には、会計上の見積りの変更ではなく「過去の誤謬の訂正」に該当します(第21項)。

<ソフトウェアの減価償却の方法に関する開示>

  • ソフトウェアの「見込有効期間及び見込利用可能期間」の変更は、「会計上の見積りの変更」に該当することが明示されました(第22項)。
  • ソフトウェアの減価償却の記載上の留意点から「見込有効期間及び見込利用可能期間」の変更についての記述が削除されました(第22項)。

「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」

以下のQ&Aが削除されました。

  • 「Q7:研究開発費は、発生時の費用として処理することとなりましたが、商法における試験研究費の繰延資産計上に係る規定との関係はどのように考えるべきですか」
  • 「Q25:適用に伴う経過措置に関して留意するべき事項は何ですか」

「金融商品会計に関する実務指針」

貸倒引当金の会計処理の見直し(第123項から第125項)

  • 貸倒引当金の直接減額による取崩しの取扱いから、貸倒引当金の不足が計上時の見積り誤差等によるもので、明らかに過年度損益修正に相当するものと認められる場合の取扱いが削除されました(第123項)。
  • 貸倒見積高を債権から直接減額した後に、残存する帳簿価額を上回る回収があった場合には、原則として「営業外損益」として当該期間に認識することになりました(第124項)。
  • 貸倒引当金の繰入額と取崩額を相殺表示するときに、取崩額の方が大きい場合には、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」にしたがって、原則として「営業費用又は営業外費用」から控除するか又は「営業外収益」として当該期間に認識することになりました(第125項)。

有価証券の保有目的区分等変更時の取扱いの見直し(第81項、第90項、設例8)

  • 有価証券の保有区分について、期中に変更の決定が行われた場合であっても、変更が期首(直前中間決算日又は直前四半期決算日の翌日を含む。)にされたものとみなして、振替の処理ができることになりました(第81項)。
  • 評価差額処理方法の変更(部分純資産直入法から全部純資産直入法への変更又は全部純資産直入法から部分純資産直入法への変更)は、「会計方針の変更」に該当し、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」にしたがって会計処理を行うこととなりました(第81項)。
  • 評価差額処理方法の変更の取扱い(第90項)が削除されました。

「金融商品会計に関するQ&A」

  • 貸倒実績率法に関するQ&A(Q39)が削除されました。

「税効果会計に関するQ&A」

  • 会計方針の変更に伴う遡及適用や、過去の誤謬の修正再表示が行われた場合の税効果会計の適用についてのQ&A(Q13)が追加されました。

<遡及適用に係る税効果会計>

過去の各期間の財務諸表への反映

  • 遡及適用により、表示される過去の各期間の財務諸表には、当該各期間の影響額が反映されます。遡及適用による会計上の資産又は負債の額の変更に対して、課税所得計算上の資産又は負債の金額は修正されず、当該差額は通常一時差異に該当するため、表示される過去の各期間の財務諸表において、税効果会計を適用する必要があると考えられます。
  • 連結子会社又は持分法適用会社が会計方針を変更し、留保利益が修正される結果、連結財務諸表上、子会社等への投資に係る一時差異の金額が修正される場合で、当該一時差異に対して税効果を認識しているときは、留保利益に係る税効果の金額も修正されることになります。

繰延税金資産の回収可能性の判断

  • 繰延税金資産の回収可能性の判断は、「会計上の見積り」に該当する事項と考えられます。会計上の見積りの変更においては、過去の財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき最善の見積りを行った場合、「過去に遡って処理せず、将来に向かってその影響を反映」することになります
  • 遡及適用により、過去の年度における監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」5の会社分類(例示区分)が異なる状況になったとしても、遡及適用における過去の時点での回収可能性の判断は、過去の時点で最善の見積りを行ったものであり、また、本質的な将来年度の会社の収益力は、会計方針の変更によって変わるものではありません。
  • したがって、過去の年度の繰延税金資産の回収可能性には影響させず、会計上の見積りの変更に係る原則を鑑み、将来に向かってその影響を反映させることが適切であり、会計方針の変更を行った年度の損益に反映することになると考えられます。

<修正再表示に係る税効果会計>

過去の各期間の財務諸表への反映

  • 修正再表示により、表示される過去の各期間の財務諸表には、当該各期間の影響額が反映されます。修正再表示による会計上の資産又は負債の額の修正に対して、課税所得計算上の資産又は負債の金額が修正されず、当該差額は通常一時差異に該当するため、表示される過去の各期間の財務諸表において、税効果会計を適用する必要があると考えられます。
  • 子会社等への投資に係る一時差異が修正された場合に、税効果の金額が修正される取扱いも、遡及適用の場合と変わらないと考えられます。

繰延税金資産の回収可能性の判断

  • 修正再表示の対象となっている財務諸表の作成年度における将来の見積課税所得や監査委員会報告第66号による過去の業績等に基づく会社分類(例示区分)について修正が必要と考えられるときには、修正後の見積課税所得や会社分類を基礎として、繰延税金資産の回収可能性を判断し、修正再表示を行うことに留意が必要です。

「包括利益の表示に関する会計基準」の公表に伴う改正

「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」

親会社が在外子会社の支配を獲得した後に生じた評価・換算差額等に属する項目の円換算額による変動額については、連結包括利益計算書又は連結損益及び包括利益計算書におけるその他の包括利益として計上することになります。

「金融商品会計に関する実務指針」

包括利益の表示の導入に伴う用語の見直し(第66項等)がありました。

適用時期

「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の公表に伴う改正

平成23年4月1日以後開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び過去の誤謬の訂正から適用されます。

なお、「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」、「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」、「金融商品会計に関する実務指針」については、適用初年度より前の事業年度に行われている会計上の変更及び過去の誤謬の訂正については遡及処理しないことに留意が必要です。

「包括利益の表示に関する会計基準」の公表に伴う改正

平成23年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に関わる連結財務諸表から適用されます。

その他の改正

上記以外は、平成23年3月29日から適用されます。

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