改正(中間報告)の概要
国際会計士連盟の国際監査・保証基準審議会が行うクラリティ・プロジェクトの動向を踏まえ、平成23年1月7日に、日本公認会計士協会から、関連当事者に関する監査基準委員会報告書の新起草方針に基づく改正版「監査基準委員会報告書57号『関連当事者』(中間報告)」が公表されました。
本報告書は監査基準委員会報告書第34号「関連当事者」を全面改正するものです。本報告書は、監査基準委員会報告書第34号と比べ、よりリスク評価手続・リスク対応手続に沿った報告書の構成となっています。
報告書の全体的な特徴
近年の会計不祥事における不正な財務報告には、関連当事者を通じて実行されたものがあります。このような状況を踏まえて、本報告書では、監査人が関連当事者とその財務諸表に与える影響に注意を払うことを強調しています。
報告書の個別的な特徴
適用される財務報告の枠組みに関連当事者の定めがない場合の取扱い
関連当事者の定義は、通常、適用される財務報告の枠組みに記載されています。しかし、適用される財務報告の枠組みに、関連当事者についての定義が定められていない場合や、又は最小限の事項しか定められていない場合についても、監査人は、財務諸表が関連当事者との関係及び関連当事者との取引によって影響を受ける範囲内において、これらの関係や取引を理解する必要があります。そこで、本報告書では関連当事者について定義を定め、一定の手続を要求しています(第4項、A1項、第9項(2)) 。
同一の所有者によって共通の支配下にある企業
同一の所有者によって共通の支配下にある企業は、関連当事者に該当します。しかし、政府(例えば、国又は地方公共団体など)の共通の支配下にある企業の場合には、重要な取引があるか、又は相互に経営資源を相当程度共有している場合を除き、当該企業は関連当事者とはみなされません(第9項(2)) 。
絶大な影響力
企業又はその経営者に対して「絶大な影響力」を有する関連当事者とは、多くの財務報告の枠組みに記載される「支配力」や「重要な影響力」の概念とは別に、企業又はその経営者に非常に強い影響を及ぼすことができる者が意図されています。
「絶大な影響力」という用語は、このような者から不正リスク要因が生じ得ることを踏まえ、これに対する監査手続を説明するために、便宜的に使用されるものです(第18項、A6項)。
関連当事者が「絶大な影響力」を行使する兆候の例示として、関連当事者が関与する取引が独立した第三者によって検討及び承認を受けることがほとんどないこと等を掲げています(A28項、A29項)。
関連当事者としての特別目的事業体
ある状況において、特別目的事業体は、企業が極めて少ない持分しか所有していないか、又は持分を全く所有していなくても、当該企業による実質的な支配が行われている場合には、当該企業の関連当事者となることがあります(A7項) 。
関連当事者との取引が独立第三者間取引と同等の取引条件で実行された旨の記載
経営者が、財務諸表において、関連当事者との取引が独立第三者間取引と同等の取引条件で実行された旨を記載している場合、監査人は、独立第三者間取引と同等の取引条件で実行されたかどうかについて、十分かつ適切な監査証拠を入手しなければなりません(第23項、A41項~A44項)。
発効及び適用時期
別に常務理事会で定めることとされています。