2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正の公表について

1.はじめに

企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」)は、2025年3月11日に2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(以下、「本改正」)を公表しました。

ASBJ の年次改善プロジェクトは、原則として年1回、4月1日を基準日として、ASBJが公表した企業会計基準等の要変更事項の検出作業を行い、検出された事項について、変更後の記載及び「企業会計基準及び修正国際基準の開発に係る適正手続に関する規則」に基づいて必要とされる手続を検討の上、必要に応じて複数の企業会計基準等の改正又は修正をまとめて行うものです。

2024年年次改善プロジェクトでは、ASBJが2024年4月1日を基準日として行った企業会計基準等の要変更事項の検出作業により検出された事項、及び当該作業後の企業会計基準等の開発の過程で検出された事項について、複数の企業会計基準等の改正又は修正が行われ、2024年11月21日に、公開草案「2024 年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)」が公表されました。

本改正において公表された、以下の会計基準の改正等は、公開草案に寄せられた意見を踏まえて検討を行った上で公表するに至ったものです。

包括利益の表示に関する改正

  • 企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」(以下、「改正包括利益会計基準」)
  • 企業会計基準適用指針第9号「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」(以下、「改正株主資本適用指針」)

特別法人事業税の取扱いに関する改正

  • 企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下、「改正法人税等会計基準」)
  • 企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下、「改正税効果適用指針」)

種類株式の取扱いに関する改正

  • 実務対応報告第10号「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」(以下、「改正実務対応報告10号」)

2.包括利益の表示に関する改正

その他の包括利益の取扱いに関して、これまでに公表された複数の会計基準等で使用されている用語の一部が、連結財務諸表上の取扱いに関する記載に使用されるべき表現となっていなかったため、表現の見直しを図ることを目的として改正が行われています。

改正包括利益会計基準

改正包括利益会計基準では、これまでに公表されている会計基準等で使用されている「純資産の部に直接計上」、「直接純資産の部に計上」及び「直接資本の部に計上」という用語について、連結財務諸表上は「その他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上」と読み替えるための変更が行われています。

改正株主資本適用指針

株主資本等変動計算書において、株主資本以外の各項目の当期変動額は純額で表示しますが、主な変動事由ごとにその金額を表示することができます。
改正株主資本適用指針では、連結株主資本等変動計算書において、株主資本以外の各項目の当期変動額を主な変動事由ごとに表示する場合の例として示す項目について、「純資産の部に直接計上されたその他有価証券評価差額金の増減」等の用語が使用されていたため、当該用語について見直しが行われました。

用語の見直しにあたっては、同様の区分により内訳を示している企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」と用語の統一を図ることで、連結包括利益計算書又は連結損益及び包括利益計算書と連結株主資本等変動計算書の連携が理解しやすくなると考えられるため、「当期発生額」及び「組替調整額」という用語に変更することとしています。

適用時期等

改正包括利益会計基準及び改正株主資本適用指針は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度の期首から適用されます。

また2025年3月31日以後 最初に終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から早期適用が認められています。
ただし早期適用を行う場合であっても、2025年3月 31日以後最初に終了する連結会計年度に係る中間連結財務諸表及び四半期連結財務諸表については改正包括利益会計基準を適用しないこと、また、当該連結会計年度に係る中間連結財務諸表については改正株主資本適用指針を適用しないこととされています。

3.特別法人事業税の取扱いに関する改正

2019年度税制改正によって、特別法人事業税が創設されました。企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下、「法人税等会計基準」)では、具体的な税金ごとに会計処理及び開示について定められていますが、改正前の法人税等会計基準では、特別法人事業税の取扱いについて個別の定めが設けられていなかったため、特別法人事業税の取扱いを明確にするために企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第28号「税公開会計に係る会計基準の適用指針」の改正が行われています。

改正法人税等会計基準

改正法人税等会計基準では、特別法人事業税のうち地方税法の規定により計算した所得割額によって課すもの(以下、「特別法人事業税(基準法人所得割)」)について、事業税(所得割)と同様の取扱いを行う旨を明確化するための変更が行われています。

また、開示に関する定めについて、改正前の法人税等会計基準第9項における「法人税、 住民税及び事業税などその内容を示す科目をもって表示する」とする記載における「法人 税、住民税及び事業税」が表示科目の例を示していることがより明確となるように、表現の変更が行われています。

改正税効果適用指針

改正税効果適用指針では、法定実効税率の算式に特別法人事業税率が含まれることを明確化するとともに、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率に関する定めに関して、特別法人事業税は国税であるため、特別法人事業税(基準法人所得割)について法人税及び地方法人税と同様の取扱いが行われることが明確化されています。

適用時期及び経過措置

適用時期

改正法人税等会計基準及び改正税効果適用指針は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされています。

また、2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から早期適用が認められています。
ただし早期適用を行う場合であっても、当該連結会計年度及び事業年度に係る中間連結財務諸表及び中間個別財務諸表並びに四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表については適用しないこととされています。また改正法人税等会計基準と改正税効果適用指針は同時に適用する必要があります。

経過措置

改正法人税等会計基準及び改正税効果適用指針は、改正の影響を受ける企業の数が限定的と考えられる中で、影響を受ける場合には一定の負荷が生じる可能性があることから、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の資本剰余金、利益剰余金及び評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用できることとされています。

またこれまでの表示方法と異なることとなる場合、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができることとされています。

4.種類株式の取扱いに関する改正

改正前の実務対応報告第10号「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」の適用対象となる種類株式に関する定めについて、会社法の施行に伴い削除された商法(以下「旧商法」)の条文を参照したままとなっていたため、会社法を参照する定めに変更されています。

用語の定義

改正実務対応報告第10号では、当該実務対応報告の適用対象となる種類株式について、 「会社法第108条第1項に従い内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合の標準と なる株式以外の株式」として定義されています。

会社法第108条第1項では、旧商法で認められていなかった種類の株式を発行することが可能とされ、旧商法で認められていた種類の株式についても設計の柔軟化が図られています。そのため、会社法第108条第1項を参照する定義とすることにより、改正前の実務対応報告第10号の開発時において想定されていなかった種類株式も適用対象に含まれることになりました。

適用時期等

改正実務対応報告第10号は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後取得する種類株式について適用することとされています。

また、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首より前に取得した種類株式のうち、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の前連結会計年度及び前事業年度の末日において保有する種類株式については、次のいずれかの方法を選択できます。

(ア)従前の会計方針を継続する。
(イ) 改正実務対応報告第10号を2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の末日から将来にわたって適用する。
(ウ) 改正実務対応報告第10号を2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から将来にわたって適用する。

5.参考資料

詳細は、以下をご参照ください。
https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards/y2025/2025-0311.html

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