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実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」の公表について

Posted At 2020年11月27日 @ 11:32 AM In 企業会計 | Comments Disabled

1.はじめに

企業会計基準委員会(以下「ASBJ」)は、2020年3月31日に実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」(以下「本実務対応報告」)を公表しました。

令和2年度税制改正において従来の連結納税制度が見直され、グループ通算制度に移行する税制改正法(「所得税法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第8号))(以下「改正法人税法」)が2020年3月27日に成立しました。
これにより、グループ通算制度の適用対象となる企業は、改正法人税法の成立日(2020年3月27日)以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む)において、グループ通算制度の適用を前提として繰延税金資産の回収可能性の判断を行う必要がありますが、当該判断を行うことについて、実務上対応が困難であるとの意見が聞かれたことから、ASBJにおいて、必要と考えられる取扱いが検討されてきました。

本実務対応報告は、2020年2月13日に公開草案を公表し、広くコメント募集を行った後、ASBJに寄せられたコメントを検討し、公表するに至っています。

3.グループ通算制度の概要

グループ通算制度とは、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行い、その中で、損益通算等の調整を行う制度であり、2022年4月1日以後開始する事業年度から適用されます。

適用法人の範囲や、損益通算、欠損金の通算といった連結納税制度におけるメリットは同様ですが、連結納税制度では、親法人が連結申告と連結納税を行う(一体申告方式)のに対し、グループ通算制度では、各法人を納税単位として、それぞれの法人が個別に法人税額の計算及び申告を行う(個別申告方式)点が大きく異なり、この点において、グループ通算制度の適用により、事務負担の軽減やグループ経営の多様化に対応しやすくなると言われています。

なお、改正法人税法の成立日(2020年3月27日)の属する事業年度において連結納税制度を適用している企業及び改正法人税法の成立日より後に開始する事業年度から連結納税制度を適用する企業は、税務署長に対して届出書を提出しない限り、2022年4月1日以後開始する事業年度から自動的にグループ通算制度の適用対象となります。

グループ通算制度の詳細は、以下をご覧ください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei2020/01.htm [1]

3.本実務対応報告の概要

本実務対応報告の概要は以下のとおりです。

範囲

本実務対応報告は、改正法人税法の成立日(2020年3月27日)の属する事業年度において連結納税制度を適用している企業及び改正法人税法の成立日より後に開始する事業年度から連結納税制度を適用する企業を対象としています。

会計処理

企業会計基準適用指針28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」)第44項では、繰延税金資産及び繰延税金負債の額は、決算日において国会で成立している税法に規定されている方法に基づき、将来の会計期間における減額税金又は増額税金の見積額を計算するとされています。

このため、2022年4月1日以後、グループ通算制度の適用を行う企業については、改正法人税法の成立日(2020年3月27日)以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む。)において、グループ通算制度の適用を前提とした税効果会計の適用を行う必要があります。

しかしながら、上記の取扱いは実務的に困難であると考えられるため、本実務対応報告では以下の会計処理が定められています。


当面の取扱い

本実務対応報告では、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む)についてグループ通算制度の適用を前提とした税効果会計における繰延税金資産及び繰延税金負債の額については、税効果適用指針第44項の定めを適用せず、改正前の税法の規定に基づくことができるとされています。

当該会計処理の対象

当該会計処理の対象は、以下の通りです。
◆グループ通算制度への移行
◆グループ通算制度への移行にあわせて単体納税制度の見直しが行われた項目以下の項目
  ①受取配当等の益金不算入制度
  ②寄附金の損金不算入制度
  ③貸倒引当金
  ④資産の譲渡に係る特別控除額の特例

当該会計処理が適用される期間

本実務対応報告における会計処理は、連結納税制度を適用する場合の税効果会計の適用に関する取扱いについて定められた実務対応報告第 5 号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その 1)」及び実務対応報告第 7 号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その 2)」に関する必要な改廃をASBJが行うまでの間の特例的な取扱いとされています。

今後新たに開発される会計基準等において、グループ通算制度に基づいた繰延税金資産の回収可能性の判断についての考え方が明らかにされることが想定されるため、今後の動向に留意が必要です。

開示

本実務対応報告に基づき特例的な取扱いを適用した場合、原則的な方法による場合と見積りの基礎が異なることから、繰延税金資産及び繰延税金負債の額について、本実務対応報告の取扱いにより改正前の税法の規定に基づいている旨の注記を求めることとされています。

4.適用時期

本実務対応報告は、公表日以後適用するものとされています。

5.参考資料

本実務対応報告の詳細は、以下をご覧ください。
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/practical_solution/y2020/2020-0331-04.html [2]


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[2] https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/practical_solution/y2020/2020-0331-04.html: https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/practical_solution/y2020/2020-0331-04.html

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