開示・監査制度一元化検討プロジェクトチームによる報告「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示についての検討」の公表について

1.はじめに

日本公認会計士協会 開示・監査制度一元化検討プロジェクトチームは、平成29年8月25日に「開示・監査制度一元化検討プロジェクトチームによる報告「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示についての検討」」(以下、「本報告」)を公表しました。

同プロジェクトチームは、平成27年11月に、「開示・監査制度一元化検討プロジェクトチームによる報告「開示・監査制度の在り方に関する提言-会社法と金融商品取引法における開示・監査制度の一元化に向けての考察-」」を公表し、会社法と金融商品取引法の法定開示における財務情報を一元化し、監査も実質的に一元化すべきと提言しています。

また、「日本再興戦略2016」(平成28年6月)において、「事業報告等と有価証券報告書を一体的に開示する場合の関係省庁の考え方等の整理と共通化可能な項目に係る具体的な進め方の決定」が施策として掲げられており、これを受けて日本経済再生本部の下、未来投資会議構造改革徹底推進会合「企業関連制度改革・産業構造改革―長期投資と大胆な再編の促進」において、金融庁、法務省及び経済産業省により「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示に向けた検討」が行われていることが報告されています。

本報告は、これらの動向を踏まえ、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示について、関係省庁と意見交換をしつつ独自に検討を行った結果をとりまとめたものです。

2.本報告の概要

本報告の概要は以下のとおりです。

開示の一元化と一体的な開示

日本公認会計士協会(以下、「JICPA」)は、平成27年11月の開示・監査制度一元化検討プロジェクトチームによる報告(以下、「一元化PT報告」)に記載のとおり、会社法と金融商品取引法の法定開示の財務情報及び監査の一元化を提言しています。
一元化PT報告における「財務情報の一元化」 とは、会社法と金融商品取引法の法定開示書類のうち財務情報を完全に一本化することを指向するものであり、監査対象である財務情報に焦点を絞っていますが、一体的開示における記載内容の整理・共通化・合理化の対象には非財務情報も含まれていることから、本報告では、開示書類全体を検討対象としており、「一元化」とは、 会社法と金融商品取引法の両方の制度目的を満たす一組の開示書類とすることを指向するものとしています。

一方、金融庁他関係省庁及び未来投資会議における一体的開示は、企業が任意にオプションとして選択できる方法という前提に立ち、まずは、会社法の事業報告等と金融商品取引法の有価証券報告書の記載内容の整理・共通化・合理化を図り、効果的、効率的な開示を目指すことが示されています。
ここでいう「一体化」は、記載内容の共通化により相互利用を行い、結果として両法令の開示の一体化を図ることに加え、両法令の制度目的を満たす一組の開示書類の作成、開示も最終的な形態として含まれているものと考えられ幅広い対応方法が想定されているものと考えられます。

本報告では、上記のように「一元化」・「一体的開示」の用語を使い分けた上で、一体的開示について、両法令に基づく開示書類の開示のタイミングで想定されるメリットと特徴及び監査上の論点・留意点について取りまとめています。

また、本報告が、会社法と金融商品取引法の開示及び監査の「一元化」の実現に向けて着実に進んでいくための一つの施策となることを期待するとともに、「一体的開示」の促進のためには、事業報告等と有価証券報告書の記載内容を共通化、一体化することについて、法令上問題がないことを周知し関係者が利用しやすい環境を整える必要があると提言しています。

一体的開示の取組による利点

一体的開示の取組により、会社法の事業報告等と金融商品取引法の有価証券報告書の記載内容が整理・共通化・合理化された場合、以下のような利点が期待されます。

◆作成者及び監査人
開示書類の作成及び監査の負担を軽減できる

◆株主・投資家
詳細な開示書類を株主総会前に入手できる可能性が高まる

一体的開示の方法

一体的開示の方法としては、以下の2つの方法が考えられます。

◆会社法と金融商品取引法のそれぞれの法令に基づく「二組の開示書類を段階的に開示する方法」
◆両法令の開示要請を満たす「一組の開示書類を一時点で開示する方法」

後者の方法で、一組の開示書類として開示することになれば、作成者及び監査人にとっては、開示書類の作成及び監査の負担がより軽減され、株主・投資家にとっては、一度に必要な情報がまとめて入手でき、より利便性が高まるなど更なる利点があると期待されます。

一体的開示における監査

一体的開示における監査では、現行制度の監査でも同様の論点・留意点があるものの、一体的開示のため特に留意すべき点が存在します。

監査上の論点・留意点は、一体的開示の方法として「二組の開示書類を段階的に開示する方法」又は「一組の開示書類を一時点で開示する方法」のどちらを採用するかで異なります。
また、一体的開示の特有の論点として、比較情報及び過年度遡及処理の取扱いには留意する必要があります。一方で、後発事象の問題については、一組の開示書類として一時点で開示されれば解消されることになります。

今後に向けて

一体的開示に向けた実務が促され、効果的かつ効率的な開示の実現及び株主総会日程・基準日の合理的な設定につながることが期待されています。

3.参考資料

本報告の詳細は、以下をご覧ください。
http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/about/news/20170825fba.html

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