国境を越える電子商取引と消費税について

1.はじめに

平成28年7月25日に、租税調査会研究報告第31号「国境を越える電子商取引と消費税について」が日本公認会計士協会より公表されました。

本研究報告は、平成27年度税制改正において、インターネットを経由するデジタル財の越境配信のように、税関による国境税調整の対象とならない取引について消費税法の改正が行われたことから、その制度上の課題などについて検討を行ったものです。

2.平成27年度改正消費税法のポイント

消費税の課税対象

従来、消費税の課税対象は、以下とされていました。
①国内において事業者が行った資産の譲渡及び資産の貸付並びに役務の提供
②保税地域から引き取られる外国貨物の引き取り

平成27年度改正により、課税対象は、以下のように変更されました。
①国内において事業者が行った資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く)
②特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等)
③保税地域から引き取られる外国貨物の引き取り

※特定資産の譲渡等とは、B2B取引及び特定役務の提供をいう(消費税法第2条第8号の2)

電気通信利用役務を定義

電気通信利用役務を定義して、これに該当する電子商取引を役務提供取引と規定しています。

消費税法基本通達5-8-3は、電気通信利用役務の提供の例示列挙しており、例えば次に掲げるようなものが該当するとしています。
①インターネットを介した電子書籍の配信
②インターネットを介して音楽・映像を視聴させる役務の提供
③インターネットを介してソフトウエアを利用させる役務の提供
④インターネットのウェブサイト上に他の事業者等の商品販売の場所を提供する役務の提供
⑤インターネットのウェブサイト上に広告を掲載する役務の提供
⑥電話、電子メールによる継続的なコンサルティング

内外判定基準

資産の譲渡等の内外判定は、従来、下記①②の場所がどこかで判定されてきました。
①資産の譲渡又は貸付けである場合には、当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所
②役務の提供である場合には、当該役務の提供が行われた場所

平成27年度改正では、上記②の「役務の提供」のうち、電気通信利用役務の提供である場合には、当該電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所(現在まで引き続いて1年以上居住する場所をいう)または本店もしくは主たる事務所の所在地で判断する仕向地課税になりました。

B2B取引とB2C取引

課税方式を規定するに当たって、役務提供を受ける側での仕入税額控除の観点から、対象取引を事業者向け電気通信利用役務の提供(B2B取引)と消費者向け電気通信利用役務の提供(B2C取引)に分類しています。
 

3.参考資料

本研究報告の詳細は以下をご覧ください。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/files/2-2-31-2-20160812.pdf

Print This Post