はじめに
2013年3月7日に、IASB(国際会計基準審議会)より「金融商品:予想信用損失」に関する公開草案が公表されました。これは、現行のIAS第39号「金融商品:認識及び測定」に対する部分的改訂案であり、基準として確定すればIFRS第9号「金融商品」に組み込まれるものです。
当該草案は、2013年7月5日まで広く一般からコメントを受け付けています。
提案された改訂のポイント
提案された改訂の主要ポイントは、以下の2点です。
(1)予想信用損失の認識
金融危機において、貸付やその他の金融商品に関する信用リスクの認識遅れ、すなわち、信用損失事象が発生するまで信用リスクを認識しないとする現行の発生損失モデルが問題視されました。
そこで、当公開草案では、現行の発生損失モデルに代わり、予想信用損失モデルの適用が提案されています。予想信用損失モデルでは、過去及び現在の情報のみならず、将来情報、すなわち金融商品の将来キャッシュ・フローについて予想される回収可能性に影響を及ぼす合理的で裏付け可能な将来情報も含めて予想信用損失の見積りを行うとしています。
このモデルを採用することにより、信用リスクが認識される前に信用損失事象が発生してしまうことを回避できることになり、現行基準で指摘された信用リスクの認識遅れの問題を改善することができます。
(2)同一の減損モデルの適用
現行基準では、複数の異なる減損モデルが適用されており、複雑であるとの批判がありました。そこで、当公開草案では、現行の複数モデルに代わり、すべての金融商品に同一の減損モデルを適用することで、現行基準で指摘された複雑性の問題を改善することができるとしています。