IFRS第11号「共同支配の取決め」の概要

IFRS第11号「共同支配の取決め」について

IFRS第11号「共同支配の取決め」は、合弁事業等の複数の当事者によって共同支配される事業又は企業の財務報告に関する原則を定めています。

我が国でも、事業の成否及びコスト負担を含むリスクの分散、新技術又は新市場へのアクセス提供手段確保等の事業開拓、又は当事者の強みの共有による事業成功の確度増強等の理由により、様々な事業が複数の当事者により共同で行われています
例えば、半導体事業、石油・天然ガス開発、ショッピングセンター開発、携帯電話や車両の製造販売等です。

以下の各基準では、複数の当事者により共同で行われる事業等について、以下の会計処理を行うと定めています。

  • 日本基準 : 共同支配の取決めの種類に応じて持分法を適用
  • I F R S : 共同支配の取決めの種類に応じて持分法を適用するか、又は取決めで定められた資産負債に対する持分を認識

基準改訂の経緯

IFRS第11号は、IAS第31号「ジョイント・ベンチャーに対する持分」への改善として、2011年5月に定められました。
当基準が策定された理由は、主として以下の2点にあります。

(1)取決めの構造が会計処理の唯一の決定要因であったことへの改善

従前のIAS第31号「ジョイント・ベンチャーに対する持分」では、共同支配の取決めが企業を通じて組成されている場合には比例連結又は持分法を、そうでない場合比例連結により会計処理を行うことを要求していました。

しかし、異なる会計処理の要求の基礎を、企業の有無(法人格を有しているか否か)だけにおいていた結果、当事者に与える権利義務が同様であるにも関わらず異なる会計処理が行われたり、権利義務が相違する取決めに対して同様の会計処理が適用されていました。

このため、「企業」より広い概念である「別個のビークル」という用語を導入し、企業の有無ではなく、当事者の権利義務に即した会計処理が行われるよう改善が行われました。

(2)ジョイント・ベンチャー(共同支配企業)に係る会計処理の選択肢排除

従前のIAS第31号「ジョイント・ベンチャーに対する持分」では、ジョイント・ベンチャー(共同支配企業)に対する持分を有する当事者は、当該持分を比例連結又は持分法で会計処理を行うとされていました。

しかし、企業が組成されていることに関する法的形式と、その取決めから生じる権利及び義務は必ずしも同一ではありません。また、仮に権利義務が同一であっても会計処理に選択の幅があることで、財務諸表の比較可能性が阻害されていました。

このため、上述(1)に記載した通り、企業の有無ではなく、当事者の権利義務に即した会計処理が行われるように改善が行われました。

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